夏休み期間の美術館展示は、子供向けの動物や絵本が選ばれることが多い。私はその分野があまり得意ではなく、この時期は美術館に足を運ぶ機会が減ってしまう。ただ、好きなテーマばかりだと視野が狭くなるので、身近な地元美術館の絵本に関係する特別展に行ってみることにした。実は同時開催している版画のコレクション展が良さそうだなと思っていたのでそちらも楽しみにする。

五味太郎さんは聞いたことがあるようなないような?という感じだが、絵を見ると、以前どこかで目にしたことのある絵本作家だと分かる。分かりやすく簡略化はしてあるが、ちゃんと登場人物の表情は伝わるし、色合いも好ましく、見ていて楽しい雰囲気である。
原画が展示されているので読んでいくと、「おお、こういう展開に持っていくのね、おもしろいな。」と感じる。寓話的な説教臭さがないのがいい。うちの子に読んだのは妻の家にあった古い絵本が多かったなあ。うちの子にも読ませれば良かった。
五味さんの言葉も書いてあり、インタビューされたときに、世界平和についての絵本を描かれないのですかと問われ、描いていますよと言うと、「どの本ですか?」と訊かれたとのこと。
五味さんにとっては、普段から描いている絵本そのものが平和を表現している作品だったのだろう。しかしインタビューワーは、より直接的なテーマを期待していたのかもしれない。直接的に描くより、より包括した視点の方が受け入れやすく、かつ心に残るのではないかなとそのエピソードを読んで感じた。
原画の他は年代ごとに出版した絵本が並べられ、数枚大きな絵画作品があった。抽象的な雰囲気の中に物語性を感じる作品である。絵本作家という肩書だけではなく、画家としても通用する作品である。このサイズの絵をもっと観たいなあ。子供たちを集めてこの絵の物語を作ってもらうのも良さそうに思う。
混雑するほどのお客さんではなかったが、通常の展覧会と違って家族連れが多かった。絵本を閲覧できるコーナーもあり、また、展覧会には珍しくBGMが流されていて、いつもとは違う雰囲気である。作品を販売しているようで、特別展では珍しいかな。家に飾るのにはちょうど良いサイズで、色合いも優しくインテリアとして映える。売れた作品もあり、家の雰囲気に合うのなら好ましい作品であろう。絵本作家が好かれる理由が何となく分かるなあ。会期末が近いので、興味のある方はお早めに。
同時開催の版画コレクション展も見応えがあった。朝井清の木版、斎藤清の会津シリーズ、ルオーの『ミセレーレ』など、表現の幅が広く楽しめる内容だった。こちらも会期末が近いので併せてご覧下さい。