開催されていたのは、京都の各地域をテーマにした展覧会「京の百景」である。本展は、1972~73年にかけて日本画家に京都の自然・風景・風俗・行事などを描くことを委嘱し、その中から選ばれた83点の作品を、洛心・洛西・洛北・洛東・洛南・南山城・丹波・丹後といった8つの地域ごとに紹介している。
京都に特別詳しいわけではないが、半分くらいはどこかしらに足を踏み入れたことはあり、実際に知っている風景もある。また、テレビなどを通じて知る名所も多く、訪れたことがなくとも親しみを感じる景色が描かれているので、実際に訪れたことがない場所でも楽しめるだろう。

展示全体を通して、「この作品が一番素晴らしい」と突出する中心的作品があるわけではない。しかしその分、各地域の特色を、それぞれの作家が自身のスタイルで丁寧に描き出しており、総じて好感の持てる展示である。風景画が好きな私にとっては、気楽に楽しめる内容である。
作風は画家ごとに特色があり、鑑賞しながら自分の好みを探していくのも楽しい。私自身、以前とは嗜好が少し変わり、風景を凝縮したような表現や、面の構成やパターンによって画面を魅せる作品に強く惹かれるようになっている。考えてみれば、普段の撮影で超望遠レンズを多用し、被写体を圧縮したり、色・模様・線によって画面を構成することが多いため、自然とそうした作品に目が向くのだろう。

尾道市立美術館は安藤忠雄の設計による建築で、展示鑑賞の導線としては親切とは言えない。迷路のような構造に戸惑う人も多いだろうが、一方で空間を探検するような楽しさもある。最後の展示室を出ると尾道水道が眼前に広がり、特に桜の季節であれば、さぞ見事な景観だろうと想像される。

館内には、美術館に入ろうとする黒猫と警備員との“攻防”を写した写真が壁一面に貼られており、また、正面にも猫のオブジェが並び、猫好きには嬉しい場所だ。私も猫好きなので猫グッズを数点買って帰った。
周囲の公園を含めて散策するのも、この美術館の楽しみの一つである。訪れた日は八重桜が見頃で、ツツジは咲き始め、ウツギは盛りを迎えようとしていた。これから訪れる人にとっては、ツツジが特に楽しめるだろう。山の上であり、駐車場からも少し歩くので、足の不自由な方にはややアプローチの厳しい立地ではあるが、花を愛でながら、ゆっくりと散歩する心持ちで訪れるのが似合う場所である。
