広島市現代美術館へ「ライフ=ワーク」展を観に行ってきました。現代美術館の特別展はさして興味がなくても(笑)新しい発見があるので必ず行くようにしているのですが、今回は以前被爆樹木について対談したことのある故入野忠芳さんの作品が出品されていることもあり、これは観に行かねばと思っていたのです。
原爆投下後70年の今年はいろいろと国民一人一人が考えなくてはならない事柄が多いのですが、現代美術館は3部構成の特別展でヒロシマのこれまでと今とこれからをアートという側面から捉えようとしています。今回は第1部、ライフ=ワークということで、「自身の体験、生活、人生が色濃く反映する13作家の表現をあわせて紹介します」とのこと。
 
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最初は被爆者の描いた原爆の絵。
平和教育を受ける広島県の学校の生徒なら一度は目にしているし、平和資料館へ見学に行ったりしますので、私も子供の頃に目にしています。でも、怖い感じがしてあまり直視していなかったので、大人となって久し振りに改めて観ました。「何だろう?この突き刺さるものは?」というのが正直な感想です。描き手はプロの画家ではないから(巧い人もいますが)絵としての技術は低いけれど、心に突き刺さってくるものがあります。自分が親という立場になったことも大きいのかもしれません。

これら被爆者の絵は被爆後30年経ってからNHKに持ち込まれた被爆者の絵がきっかけになって市民から原爆の絵を募集することとなり、現在は4000枚ほど集まったそうです。辛い体験を絵にして表出する作業はかなりの苦痛を伴うものだと思いますが、それだけにその絵にはその人の思いが凝縮したものになっているはずで、故に絵の技巧云々ではなく、ストレートに鑑賞者に訴えてくるものがあるのでしょう。
プロの画家としては、有名な丸木位里・俊夫妻の「原爆の図」は強烈な印象を与えるすごい作品ですが、位里の妹で画家の大道あやさん(被爆されています)は、兄夫婦の絵より被爆者の絵の方がよく実情を表現している旨を語ったとか。画家は芸術的な表現が入るのに対し、被爆者の絵は芸術性よりは自身の体験を具現化する方向なので、後者の方が実情に近いのでしょう。
 
続いては香月泰男さんの作品。シベリア抑留体験から描かれた「シベリヤ・シリーズ」が有名です。彼の作品はこれまでも観ているはずなのに、今回初めて観たような感覚でした。まったく今まで何を観ていたのかな、自分(><)いやいや、香月さんの絵が分かる年齢になったということかも?
重く暗い画面からシベリアでの苦しい体験が伝わってきますが、それだけではなく、画家としての洗練された感性を感じます。写真や画像で見ると茶色い下地に黒が塗りこめられている感じですが、実物を観るとその黒の中に苦悶の顔があり、黒という色の中に様々な思いが塗り込められているように感じました。
 
次の宮崎進さんもシベリア抑留体験があり、こちらは麻袋を使った作品で、麻の繊維の持つ素朴な質感で独特の雰囲気が表現されています。
 
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四國五郎さんの展示は、弟日記と題した分厚い本。もう少し他の作品も観たかったかな。
 
殿敷侃さんの描いたご両親の遺品の点描画は、事前に見た写真や画像とは違う印象で、点描によるやさしい表現が静謐な雰囲気を作り出しています。
 
展示室の曲面に並べられた石内都さんの写真。「MOTHERS」シリーズと「ひろしま」シリーズ。「ひろしま」については以前の特別展で拝見していますが、原爆で亡くなられた方の服を、美しく撮影されています。私が撮るとしたら、悲劇の証拠、といった視点で撮影することしか思い至らないでしょうが、石内さんは故人に対する尊厳を感じる撮り方です。
 
今回の特別展のパンフの表紙となった大道あやさんの「しかけ花火」。呉市立美術館での特別展でも観ていますが、大画面いっぱいに、大輪の花火、たくさんの海の生き物が賑やかに楽しく溢れ出しています。彼女も被爆していますが、原爆についての作品は1つだけで、絵本や身近な風景を描かれています。
家業の花火での楽しい思い出と、花火の事故で夫を失い、息子も大怪我をしたという悲しい思い出の両方が花火に込められており、この絵でそれらの思いを昇華しているような感じです。
 
被爆体験も戦争体験もない若い世代の作家の展示もあります。後藤靖香さんは調査することによって作品を作られる方で、漫画風の大きな作品です。太い輪郭線が特徴でそれぞれの人物の個性が伝わってきます。リアルな肖像画より、漫画風にしてシンプルに形を捉える方が伝わりやすいのかもしれません。画面が大きいから余計に躍動感を感じて印象が残ります。調査内容も配布していて、作品鑑賞の補助となります。
 
長くなったので一旦ここで切ります。