眼の下から膿が!?(露随による外歯瘻) | アイリス動物病院__________犬と猫の病気 & 看護師日記

アイリス動物病院__________犬と猫の病気 & 看護師日記

大阪府羽曳野市にある『アイリス動物病院』です。
「犬や猫の病気について」と「看護師日記」を掲載していきます。
大切な家族であるわんちゃん、猫ちゃんが健康で長生きしていくためのお役に立てればと考えています。
是非ご覧下さい。

今回は、臼歯の破折による露随が原因で、根尖膿瘍から外歯瘻を形成した症例です。

わかりやすく言うと、
硬いものを噛んだことで臼歯が折れ、歯の中にある神経や血管が露出します。

そこから入った細菌が歯の根っこに溜まります。

目の下に穴が空き溜まった膿があふれてきます。


症例は、13歳のチワワの男の子です。
2年ほど前から、右目の下から膿が出始めました。
他院では、歯石や歯肉炎がみられたため、「歯が原因だろう」とは言われていましたが、高齢のため歯の治療をせずに抗生剤を飲んでいました。一時的には良くなりますが、完全に治ることは無く、何度も排膿を繰り返していました。そのため見た目にも痛々しく顔を触ろうとすると、痛がって怒るようになってしまっていました。
根本的な治療をしなければ、これ以上良くはなりません。

飼主様と十分お話しした上で、麻酔に耐えうるかの判断基準として身体検査、血液検査やレントゲン検査などを実施しました。
幸いにも、他には何も異常が見つからなかったため外科的な処置をすることになりました。

術前
術前の状態です。

レントゲン写真
歯のレントゲン写真です。
歯槽骨が融けてしまっています。

歯石除去前
処置前の歯の状態です。

歯石除去後
歯石を除去すると、・・・破折、露随が確認されました。
歯周ポケットはそれほど深くなく、歯槽膿漏は軽度でした。
原因の歯を抜歯→膿がたまっていた部分を洗浄→歯肉の縫合をしました。

術後
2週間後の状態です。
大きな傷も塞がり、以前よりもよく食べてくれるようになりました。また顔を触っても怒らなくなったそうです。

今回の抜歯したのは「上顎第4前臼歯」です。実はこの歯が最も破折しやすい歯です。
第4前臼歯は別名:裂肉歯といわれ、肉を切り裂くための構造になっています。(上の一番大きい奥歯です)
犬の歯は人のように硬いものをすり潰すようには出来ていないのです。そのため硬いものを咬み続けていると、刃こぼれが起きてしまいます。

お家のわんちゃんの歯は大丈夫ですか?
左右の歯の形を比較するなどして時々チェックしてみて下さい。早期に発見出来れば修復することができるかもしれません。
今回の症例では歯が割れてしまった原因はわかりませんでしたが、硬いおもちゃ(牛の蹄など)やブラスチック、石などは、破折の原因になることが多いため、十分注意して下さい。


アイリス動物病院