新国立劇場で開幕中のオペラ「愛怨」を観ました。

瀬戸内寂聴さんがオペラ台本を初めて書き下ろし、作曲の三木稔氏は闘病しながらの、さながら命がけの作品ということでも取り上げられていました。その記事を見て、早速チケットを手配した次第です。

遣唐使と双子の生き別れの姉妹の生涯をからめた愛の物語ですが、情が熱いというか、なんというか・・・。

「え?!(そんなに簡単に)死んじゃうの?」と、びっくりしてしまいました。

今時の感覚では理解できない、愛を全うする女の情と自己犠牲。でも、赤ちゃんがいるのに、(夫が死んだと聞かされて)湖に身を投げちゃうのはいかがなものか・・・と、とまどいました。

クライマックスは、琵琶の音色にのせて、この世で愛する人と出会えた喜びと、そして、死んでもあの世では幸せな思い出で満たされる、と歌い上げられます。

ときには、皇帝と皇后の痴話げんかもあり、男と女の関係は身分に関係ないものだ、と思わせます。このシーン、皇后が入浴しながら会話したりして、おもしろい。茶目っ気があるのは、寂聴さんらしい気がしました。



さて、演目が終わり、ロピーでコートを受け取って、帰ろうとした時のこと。

白髪の老夫婦のご主人様が、奥様のコートを後ろから羽織らせてあげていらっしゃるのを見かけました。会場には、私のように、「おひとり様」の女性は多かったし、女性同士のグループも結構いらしていました。

でも、その老夫婦の様子を見て、私もそんなパートナーがいたらよかった、と思いました。

エスコートとまではいかなくとも、さりげなくコートを羽織らせてくれる男性の存在があると、オペラ鑑賞として完成度が高いのは言うまでもありません。

以前、パリ帰りの友達から聞かされたたのですが、彼女が素敵なマダムと食事した時、そのマダムがコートを羽織ろうとしたら、すっと、見知らぬ紳士が近づいて、「私にさせてください」と、コートを着るのに手をかしたという話でした。

ま、もしかしたら、老夫婦の場合は、おばあちゃんが肩があがらないから、見かねておじいちゃんが手伝っただけかも~と、あとで想像してみたものの、それでも二人でオペラに来るような、仲良しさんは、いいな~と、愛怨からはほど遠い和みで帰りました。