北村雄一 「アフター・サピエンス」読了
遠い未来の地球の姿やそこに生きる生物を想像した本は確か2冊読んだことがあるが、この本は数千万年もしくは数億年先という未来、環境が大きく変わった地球の姿、その時に人間はどんな姿をしているのかなどを地球や生物がたどってきた歴史や生物学上の事実をベースにして書かれている。
う〜ん、本当か?と思える内容だが、著者は科学ライターであり、ただの妄想ではなくそれなりの根拠の元に書いているという。新しいタイプの空想科学読本といったところだ。
未来の人間の姿、これはある意味人間が進化した姿なのだが、人類がエネルギーを使いつくしたとき、そこに生存している生物は人間しかいないという前提で予測が進められている。地球上のどこでもがニッチとなるので人類は姿を変えてどこにでも進出できるというのである。しかし、一番の疑問点はそこのところだ。ほかの動物が生きてゆけない世界で人間だけが生き残ることができるのか?そんなことはいくらなんでもありえないと思うのだが著者はそれにも一応、根拠を与えている。
人間が生きてゆくためにはいろいろなエネルギーを消費しなければならない。1ヶ月ホルムズ海峡が封鎖されただけで世界が混乱の渦に巻き込まれている状況をみるとそれは確かだ。現代社会はそのエネルギーの大半を石油資源から得ているが石油は間違いなく有限の資源である。いつかは掘り尽くされる。その後、人類は何にエネルギーを求めるかというとそれは木材だと著者は考える。かつて人類が木を燃やすことでエネルギーを得ていたということになぞらえているのである。
木材という資源もある意味有限である。それは世界中のいたるところで鉄を作るために木々が茂る山をハゲ山にしてしまった事実が物語っている。
森がなくなってしまった世界では人間以外の動物は生きてゆけない。だから最後に残る動物は人類だけということになるそうだ。相当な極論のように思えるがそうなるというのが著者の考えなのでそれに従う。
限られたエネルギーを使って生き残る方法はそれを節約することだが、その節約方法のなかで最もよい方法は知能を捨て去ることである。なぜなら、人間の脳は体重に対して重量比が高く、代謝量の2割を使っているからだ。考えることを止めたらエネルギーの節約になるという考えは新鮮だ。最近、僕の体重が増えているのはまさにそれなのかもしれない。
燃やすものがなくなると鉄を精製することもできないから人類は石器時代に戻ることになる。知能を捨てると脳の容積も小さくなるから姿も類人猿っぽくなってくる。
ここで話は横道にそれるが、現世人類の脳と初期の人類のそれは容積比で3倍ほどの差があるそうだ。その進化の過程は200万年ほどある。その間、使われていた石器にはそれほどの進化の跡が見られないらしい。では、3倍の容積になった脳を何に使っていたのかというと口説き文句を考えるためだと著者は考えている。口説き文句を考えるのは大概男の方だから脳が発達するのは男だけになりそうだが、その言葉をきちんと理解しなければならないから女の脳も発達する。クジャクは求愛のために進化したのはオスだけだったが人間は言葉を理解しなければならないというところからメスも進化するのである。なるほど、僕はそういうことに縁がなかったから脳が発達しなかったのだ。
この説を読みながら、僕はそれはちょっと違うのではないかと思ったのである。増えた容量の部分で考えていたのはきっと、“死”についてではなかったのだろうかと思うのである。400万年間、ひたすら宗教を創る準備をしていたに違いないと思うのだ。
話は元に戻る。人類はその後、少ない食糧でできるだけたくさんのエネルギーを確保すべく草食化を押し進める。例えば穀物だけでなくその葉や茎の部分も消化できるよう腸が長くなってゆくのだ。さらに、草食動物は肉食動物から逃げられるようにカモシカのように足も速くなる。そういう進化をした人類はこんな姿になる。
頭は小さく、長い腸を納めた下腹部は大きく足はカモシカのようにつま先立ちになっている。
人類しかいないという前提の世界で敵になる肉食動物は何かというと、これもまた肉食動物に進化した人類である。犬歯が発達するほど顎が大きくなれないので前歯が犬歯の代わりになるそうだ。
彼らは狩りに特化した身体を持ち、槍を遠くに投げるため、手はアトラトルのような形になっている。槍を作れるだけの知能は残っているらしい。
その他、さらに草食化を進めた、四足歩行で親指で葉っぱをむしり取ることができる大型人類というのも出てくる。これはゴリラの歩き方を参考に考えられているそうだが、ゴリラがおこなうナックルウォークという歩き方は親指を地面に着けないので、その余っている親指を進化させて木の上にある葉っぱをむしり取るというのである。
なんだかそんなことはありえないだろうと思うが億年単位の期間では今とは似ても似つかない姿になっているというのもありうるかもしれない。人間の祖先も1億年前はネズミみたいな姿をしていたのだから・・。
この本は著者がYouTubeで公開した動画を書籍化したものだ。YouTubeを見てみたが、本の中のエピソードはそこから抜粋されたもので内容はまったく同じであった。このブログに貼り付けた画像もそこから拝借した。本の中でも同じ画像が使われている。
エピソードのなかでは、この、未来の人間の変わり果てた姿というのが一番センセーショナルなものだと思えるのだが、ほかには、大陸の移動、気候変動、天変地異による生物の絶滅、ほかの惑星への移住などのエピソードが収録されている。
ほ〜!と思いながら読んだのは、大陸の移動だ。今から2億5000万年後には世界の大陸はまたひとつの大陸に合体するそうだ。どんな形に合体するのかというのは確定した見解がなく4つの説があるらしい。
ただ、大陸がどのような形になってもこの頃には地球では生物が生きられない環境になっているのだけは確実だそうだ。地上は暑くなりすぎているのだ。
その原因はいくつかあるが、火山の大噴火と太陽の表面温度の変化というのが最も有力らしい。
大陸の移動で大陸同士が衝突する地点では活発な火山活動が発生する。排出される二酸化炭素は地球温暖化を促進し、上昇した気温は海水温も上昇させ、深海に眠るメタンハイドレートを気化させさらに温暖化が進む。同じ頃、太陽の中心部では水素原子を使い続けた分、核を収縮させその温度を上げる。その活動のせいで表面温度は現在よりも1〜2%上昇する。わずかな差のように思えるが地球には大きな影響があるそうだ。
いずれにせよ地球の平均気温は50度ほどになりこの温度ではほとんどの動物の体内ではタンパク質が変性してしまい生き続けることはできない。
よく、人類が滅亡する原因は核戦争や巨大隕石の衝突なのだという説が語られるがそれはどうもウソらしい。核戦争や巨大隕石の衝突によって核の冬が来るというが、その原因となる塵は対流圏に留まるため比較的短時間のうちに地上に落下してくる。だから、生物が絶滅に追いやられるほどの寒冷化と太陽光の遮蔽は起こらない。絶滅クラスの冬が来るためには、塵がその上の成層圏まで吹き上がらなければならないのだ。6600万年前、恐怖が滅んだ隕石の衝突は場所が悪く、ユカタン半島沖には硫黄を含む岩石が大量にあったため大気中の酸素と反応して硫酸が地球の成層圏を覆い寒冷化が長く続いたのである。(巨大隕石が衝突したとき、そのルートに真空地帯が生まれ、噴出した塵は成層圏まで一気に上昇する。)少しずれていたら恐竜は今でも地球上に存在していたかもしれないのである。
高温になった地上では人類は生きてゆけない。しかし、海中の平均温度は37度くらいなので魚人間としてなら生きてゆけると著者は考える。
しかし、もうここまできたらSF、空想科学を超えて妄想か滑稽話だ。しかし、著者の簡潔で装飾のない文体はどこまでが本気で書かれているのかがわからないというところがこの本の良さなのかもしれない。だから空想科学読本的なのである。そういうことなので、この本の中身を真顔で他人に話をするとコイツ、とうとう頭がおかしくなってしまったなと思われるので注意をしなければならない。
そもそも、地球上に生き残った生物が人間だけになるという設定がおかしい。そんな環境では人間自体も生きてはいないだろう。それよりも宇宙空間のほうが生き残る環境としてはまだマシのような気がする。
地球が高温化して文明が崩壊するまでにはこの本に倣うと最低でも数万年という期間があるだろう。その間に宇宙に逃げようと考える人たちもいるはずだ。そこで進化した人間はどんな姿をしているだろうか?重力がない世界では筋肉が衰え体は細くなる。使えるエネルギーが少ないから小型化もする。人工的な食事ばかりでは顎も小さくなる。宇宙船の中は太陽光もないから頭を保護するための髪の毛が必要でなくなり気温も一定に保たれてもいるだろうから汗をかかないので眉毛もなくなる。高度なテクノロジーにより相手の思うことはコンピューターを介してまる解りになるから相手の心を読むという努力が必要なくなり白目が不要になり、室内ばかりの生活では光が少なく白目の部分も黒目になる。
そんな姿を想像するとこれは一時流行った宇宙人のグレイではないか!
70年前くらい前にはその姿が目撃?されていたそうだが、そんな昔にある程度説得力のある姿の目撃が報告されていたというのは、そういった、人間と同じDNAを持った異星人が地球を訪れていたに違いないと確信してしまう・・。
この本では、グレイの形は生物の形としては破綻しているとされているが、魚人間よりもマシだろう。
と、いうような妄想なのかどうかわからないものがこの本全体を覆っているのである。





































