「全国オフ・・・できれば一緒に行きたいんだけど・・・行かん？」
最近、俺が仕事やら事故やら病気やらロクでもない悪夢にうなされて真夜中に目を覚ますと大抵、真っ暗な寝室の片隅で一人3DSか携帯ゲームをしてる奥さんが、まだメキシコ滞在中に太平洋の向こう側からかけてきた一本のTEL。
全国オフといえば、いうまでもなくFIAT500乗り達の総決起集会。そしてその開催地は、これまた言うまでもなく愛知とか静岡とかあっちの方。
そんな長距離砲が、まるで 「今日、モス行かん？」みたいなノリで飛んで来るあたりが “我が家の常識、世間の非常識” と言われる所以である。
ただ、いくらうちの奥方がスーパーサイヤ人とはいえ、東海地区日帰り往復は自殺行為
当然、２泊３日コースのちょっとした小旅行となるわけで、チンクオーナーでも何でもない俺としては
（自分のクルマのための貯金すら出来んのに、なんで金かけてわざわざ他人の愛車自慢大会のために何100㌔も彼方まで行かにゃならんのよ？ಠ_ಠ）
というのが正直なところで、昨年は怒りの節約抗議できっぱり同行辞退したのだが、一人で盛り上がってそんな節約をしてみたところで結局金は貯まらない
という事実にようやく気付いた中２の秋・・・いや、中年の秋
不思議だな 節約した金 行方不明.... by あいらす
・・・ま、そんなもんよね。
元来、どんなことも最終的には 「どうでもいいや」 に流れ着くうっちゃり体質。今回も、一年前に目くじら立ててた自分はどこへやら。家族３人快く参加すとあいなった。
いざ！浜松へ！
11/1 (土)
我が家の遠出にしては珍しく前泊・後泊という余裕あるスケジュールのため、山陽道小牧SA着はゆったりAM9:00。
とりあえず旅の記録の1枚目に、奥のチンクと俺のボクスターを並べて１枚パチリ。
ああっ！寒っ！心が寒っ！
自分がかわいそう(T ^ T)
小谷SAでは、今回の旅の友。我らが迷走王！走るバイタリティ！B500兄さんと合流。
広島から一家で遠征の我が家も十分異常だが、佐賀から一人きりの参加となると、もはや正気の沙汰ではない
途中えっらい事故ばしとって、トンネルば渋滞してさー、エンジンやらミッションやら落ちとったぁ」「へぇ。でもそれって明日は我が身…」
いや、不吉過ぎてシャレにならんからやめておこう。
相変わらず、ドイツ車とレクサスと商用車がアホみたいに飛ばし、登坂車線と走行車線と追い越し車線をプリウスが塞ぐ山陽道。
第１の休憩ポイント
は 三木SA
坊主と２人、座った姿勢のまま即身仏になりかけた体をほぐしていると、ここでさらに２台の500が登場。
「お久しぶりです！２年前の関西トリコ以来ですね！」
そう言って、男らしく力強い握手
をしてくれた御仁は、まる源さん。
「どうも、ご無沙汰してます！最初にお会いしたのは岡国でしたよね！」
そう言って、さわやかな茶髪が風に揺れているのは、タラスコさん。
いやぁ「どうも、はじめまして」と深々頭を下げる前で本当によかったぜ。
しかも、このお二人。
全国オフに参加されるわけではなく、地元近くを通る我々（正確にはB500兄さんとうちの奥さん）に合わせて、わざわざ顔見せに来てくれたのだとか。
ここ数年で、多くのチンクオーナーさんにお会いしたが、皆さんホントに人間がよくデキた方ばかりでつくづく感心する。
（へ？中にはそうでもないのもいるって？ಠ_ಠ いいんだよ！リップサービスなんだから）
仕事も人も３回目からしか覚えない俺としてはなんとも耳の痛い話だ。
そんな、ナイスガイなお二人に見送られ
再び走り出した白黒コンビは、最近は見かけるたびに心が折れそうになる 「Art Sports」 の0123タワーを右手に見ながら名神道へ
第２の休憩ポイントは、草津PA。
そこで、今度こそ正真正銘初対面
となる３人目の旅のパートナーにご挨拶
お初にお目にかかります。拙者、安芸国より・・・
出た。マセだ。
これが噂のトライデントコラボチンク。
最近行ったどっかの店を思い出す
専用色ポンテヴェッキオ・ボルドー。
うちのと同じ１.４㍑だけど
ターボ付きでこのサイズで180ps。
男心をくすぐるキーワード
世界限定499台＆日本導入100台。
そして、オーナーのしげにゃんさんの腕には、いかにも高そげな腕時計。最近「ヴィンテージライフ」熟読の副作用で時計やカメラにもIRASレーダーが反応する。
向こうのからこっちの助手席へスライド乗車したくなる要素満点
だが、いかんせん出会ってからまだ５分なので、シャイなあんちくしょうな俺にそんな厚かましいお願いを言い出す度胸があるわけもなく、当然のように何事もなく元鞘にすっぽり。
嗚呼・・・
「ねぇ、コレちょうだいや」
ぬけぬけとそう言える、チンピラのような勇気が欲しい。
３台に増えたカルガモ隊
は、うちの総長を先頭に１年ぶりとなる新名神→伊勢湾岸→東名ルートへ
さすが、この辺まで来ると周りを走るクルマも一気にグレードUPし、第三者にはどうでもいい “自称”ニュル一番時計争いをしていた日独
を代表するスポーツカーなんかがチンクよりも沢山走っている。
しかも、どれもこれも運転してるのは俺より年下くらいの若い兄ちゃん。
お巡りさん！
絶対あいつらオレオレ詐欺してるって！
最近、若くして高級外車転がしてる奴が全員犯罪者に見える、夢叶わぬ38歳。ただ・・・伊勢湾岸ダントツ最速の“白い彗星”は、トヨタ・プロボックスやったけどね（笑）
東名分岐が近づく頃には、すっかり陽も傾き、薄くなった後頭部をやさしく照らす美しい夕映え。
（どうか温熱療法で産毛がスクスク育ちますように）
それにしても相わからず 「東名」 という文字は無性にカッコ良くて気分がアガる。
「首都高」 「湾岸」そして 「東名」
この３つのワードは、ド田舎純正培養のエセ走り屋にとって「キアリク」 「ベホマズン」 「ザオリク」 に匹敵する魔法の言葉だ
広島から走ること10時間 & 570㌔
浜松西ICで高速を降り、ようやくたどり着いたこの日の宿。
「私たち、今から前夜祭だから
」
到着するや、そう言って街に消える奥とB500兄やん。さすが悪魔超人は体力レベルがケタ違いだ。
ただ、クルマってのは実は運転してる方が楽なことが多く、我が家で今も語り継がれる 「山口国道２号発狂事件」※は有名な話
（※１１年前、２７歳男性の運転するロードスターの助手席に乗っていた女性（のちにそのロードスターを売りとばすことになる）が、北九州の実家から下道で広島に戻る道中、山口県内の山中を走る国道２号線上で突然発狂。後の調べて、７時間を超えるロングドライブのストレスによる一時的な錯乱状態と判明したが、ちょうど街灯もほとんどない旧道走行中の突然の事態であったため、完全に何かが憑依したと勘違いしたドライバーは、停車時、半泣き＆失禁寸前だった＜「恐怖新聞」地方版より＞）
そんなわけで、奥とは対照的に保護観察官の俺は一切何もすることがない助手席軟禁により魂が抜ける
寸前で、さすがにオーナーでもないのに500仲間の輪に紛れ込むような気力なし
結果・・・
お祭り本番が待ちきれない500オーナー達が↑な感じで黒歴史刻みながら盛り上がってらっしゃる頃・・・
奥から1000円のお小遣いをもらった父子は、ホテルの一室で「天才！志村どうぶつ園」観ながらファミマのカルボナーラを分け合って食べていた。
へ？浜松と言えばウナギ？
ああ、あれってデマらしいよ。
そんな提案、嫁から一言もなかったもん。
ちなみに、坊主もさすがにこの日は長距離移動で疲れたのか、急にいつになく真面目な顔してこちらを見たかと思えば
「パパ！俺さ、すれ違ったら 「あ、あなたの後ろに幽霊が・・・」 って言うように設定しとるんよ！ 相手、絶対超怖くない？」
と熱く熱く
力説
すいません(￣▽￣;)
何を仰ってるのかさっぱりわかりません。
後で確認したところでは、どうやらニンテンドー3DSの“すれ違い通信”の設定で、相手側の端末に表示される自分のアバターのコメント設定のことらしいのだが、ホテルで “幽霊” などという禁断のNGワードを使うから、シャレにならなかったのはその夜・・・
すっかり爆睡した坊主の、エグるような右フック
で目覚めた深夜３時。
舌打ちして寝返りを打とうとした刹那
うううう・・・うう・・・・
明らかに聴こえちゃいけない感じの音に
おっさんの時間と呼吸が止まる。
あのー・・・気のせいっすかね？
なんか女がむせび泣くなよう声が聴こえるんですけど？
ドキドキしながら、静寂の中じっと耳を澄ましていると・・・
ううう・・・・・ううううう・・・・ずずっ・・・
すすったよ！今、鼻すすったよ！
おかーさーん！(T ^ T)
うううう・・・・うううう・・・・ううううう・・・・・うううううう・・・・
きゃー！やめてくれー！
なんだ？霊感ってのは、花粉症みたいにある年から急に覚醒すんのか！？そうなのか！？でも、そんな能力、ミーはノーサンキュー！(T ^ T)
知らない街の慣れない部屋で、おっさん完全にパニック。もうこうなると、２度寝どころか、１㌔先で針が落ちた音さえ聞こえそうなほど全センサー開放。かつて、とある一子相伝の暗殺拳伝承者は言った。
「人間は自分の潜在能力30％しか使うことはできんが、残り70％を使うことに北斗神拳の極意がある」
わかったよ、ケン！
こういうことだったんだね！(T ^ T)
もう、ちょっとした錯乱状態である。
しかしその一方では、元はと言えば全ての元凶である坊主の安らかな寝顔に、残された最後の理性が自分に語り掛ける。
（いやいやいや、そんな幽霊って・・・実は廊下の窓が中途半端に開いてて風が抜けてる音とかってオチやって・・・）
何事もない平和にいつものように明けるはずだった夜。我が子を守るため一人殺人鬼に立ち向かうような勇気を振り絞り、ベッドの上のあどけない寝顔に 「I'll be back....」 と呟き、そっと扉を開けて廊下へ出ると・・・
ううう・・・・ううううう・・・・ぐずっ・・・・うう・・・
長い廊下の果て、うっすら明るい照明の中、こちらに背を向けたジャージ姿の少女らしき姿・・・
きゃー！！Σ(￣□￣ﾉ)ﾉマジっすか！？
モノホンっすか！？
そんなことあっていいんすか！？
おっさん、完全に扉の前で腰砕け
すまん、坊主・・・
とりあえず、俺だけ逃げる
その時！！
「うん・・・こんな時間にゴメンね、ミキ・・・うん・・・うん・・・たっくんと仲直りしてみる・・・」
・・・たっくん？
仲直り・・・ミキ？
てめぇ・・・
真夜中に紛らわしい青春ごっこやってんじゃねーよ！ಠ_ಠ
ミキに謝る前に俺に謝らんかいっ！
たっくんと一緒に菓子折り持って謝罪に来いっ！ಠ_ಠ
自分の境遇をひがんでばかりじゃなくて、奥さんと一緒にその趣味の時間を楽しもう！と訪れた土地でのハートウォーミングストーリー
俺はもう２度と浜松には来ない。
以上、全国オフレポート
「お祭りスタンバイ編」 でした。
（弐へつづく）
