東証、ディスクロージャー表彰会社を発表 | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

2/15、東京証券取引所は、毎年恒例の上場会社表彰を発表しました。


■東証 平成19年度上場会社表彰の選定結果について

 http://www.tse.or.jp/news/200802/080215_a.html


受賞企業は以下のとおりです。


第13回 ディスクロージャー表彰会社(6社)


ニチレイ(2871)

 http://www.nichirei.co.jp/ir/index.html

エーザイ(4523)

 http://www.eisai.co.jp/ir/index.html
新日鉱HD(5016)

 http://www.shinnikko-hd.co.jp/ir/
アンリツ(6754)

 http://www.anritsu.co.jp/J/IR/

丸紅(8002)

 http://www.marubeni.co.jp/
KDDI(9433)

 http://www.kddi.com/corporate/ir/index.html



個人株主拡大表彰会社(6社)

NECフィールディング(2322)

 http://www.fielding.co.jp/ir/index.html

ファンケル(4921)

 http://www.fancl.co.jp/corporate/ir/index.html

日本高純度科学(4973)

 http://www.netjpc.com/IR/ir_01.html

横河電機(6841)

 http://www.yokogawa.co.jp/cp/ir/index/cp-ir-index.htm

本田技研工業(7267)

 http://www.honda.co.jp/investors/

松井証券(8628)

 http://www.matsui.co.jp/ir/ja/index.html



ディスクロージャー新人賞 (2社)

フェリシモ(3396)

 http://www.felissimo.co.jp/ir/press/

東海運(9380)

 http://www.azumaship.on.arena.ne.jp/




クラッカー 受賞企業のIR担当者の皆さん、おめでとうございます!! クラッカー



このディスクロージャー表彰制度、平成7年から行われています。


表彰の方針としては、「上場会社のディスクロージャーの充実を促進する観点から、企業内容等を適時、適切に、投資者にわかりやすい形で開示しているなど、ディスクロージャーに積極的に取り組んでいると認められる上場会社を表彰する」とされています。


そして、どのような観点から表彰会社が選ばれるかというと、「主として、決算短信(本決算)における開示内容、株主向け書類(事業報告書、株主通信、アニュアルレポート、CSR報告書、環境報告書等)、ホームページにおける情報提供、適時開示体制に関する宣誓書添付書類の記載内容等に加え、全選定対象会社に対して行うアンケート調査を主な選定要素とする。その他の適時開示や法定開示、IR活動の状況等についても参考とする」となっています。


どちらかというと、IRの体制よりは、IRに関連した制作物や書類でどのようなディスクロージャーが行われているか、という静的な側面が審査上、重きを置かれているような印象です。


東証のHP上開示されているこの賞の概要にも記載されていますが、評価されるポイントを紹介しておくと・・・。


① 最低条件

 ・決算発表が45日以内であること。

 ・直近の四半期開示でB/S、P/L、C/F、セグメント情報を開示していること。

 ・タイムリー・ディスクロージャーの観点から重大な不備がないこと。

  (開示の遅延、開示内容の不備など)

 ・決算短信や有価証券報告書等において、重大な訂正がないこと、また、決算短信に重要な開示内容の漏れがないこと。


以下、具体的な書類等における評価ポイントになりますが、あらかじめ定められたものとしては、結構あっさりしています。


② 決算短信

 ・経営方針や経営成績の説明が充実しているか、わかりやすく記載されているか。

 ・参考情報の提供など、開示上前向きな工夫がなされているか。

 ・相当程度、早期の決算発表が行われている場合は加点。


③ 株主向け書類(事業報告書、株主通信、アニュアルレポート、CSR報告書、環境報告書等)

 ・経営成績など、投資情報の提供に関する充実度、投資家の理解を深めるための工夫。

 ・記載されている情報の質・量が、その書類の性格・作成目的に応じたものか。


④ ホームページ

 ・提供されている情報が見やすく、わかりやすいかどうか、また、きめ細かな情報提供とのバランス。

 ・決算情報のほか、各種の投資判断の掲載の充実度(決算短信、各種財務分析指標の数値データ、適時開示情報、コーポレートガバナンス情報、法定開示情報など)

 ・決算説明会や株主総会の動画配信の有無


⑤ 適時開示体制に関する宣誓書添付書類

 ・開示担当組織の整備に関する説明の充実度

 ・適時開示手続の整備に関する説明の充実度

 ・適時開示体制に関するモニタリングの整備に関する説明の充実度


⑥ その他

 ・すべての選定対象会社に実施したアンケートの回答
 ・ディスクロージャーやIRに対する姿勢など。


これらの評価ポイントで考えて、受賞企業の何がよかったのか、寸評については、上記の東証HPからリンクしている「表彰会社の評価ポイント」をご覧ください。


■東証 表彰会社の評価ポイント

 http://www.tse.or.jp/news/200802/080215_a1.pdf



なお、ファンケルの個人株主の多さは、私も体験したことなので、納得~ビックリマークという気がしました。


■FANCL株主総会

 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10036960459.html



また、昨年からディスクロージャー新人賞が新設されており、2007年の第1回受賞企業は、


グリーンホスピタルサプライ(3360)

ワコム(6727)


となっています。

このディスクロージャー新人賞の選定ポイントも、ディスクロージャー表彰会社と同一のようですが、中小型銘柄で選定しているのでしょうね。



さて、私は今年初めて、このディスクロージャー表彰会社の発表会である東証上場会社フォーラム2008 という会場に行ってみました。


といっても、実はプロネクサス主催の新しいセグメント情報開示基準のセミナーとかけもちだったので、実際に表彰しているところは見れなくて、最後のパネルディスカッションを聞いただけなのですが。

(この新しいセグメント情報開示基準については、また別のトピックでご紹介したいと思います。)


場所は、水天宮のロイヤルパークホテル。


かなり大きな会場で、IR支援会社さんたちもかなり多く集まって展示コーナーで集客を競っていました。

客席のほうは、やや空席が目立つなぁという印象で、ちょっとオーバースペックだったのではないかと思われました(表彰式にはもっと人がいたのかもしれません)。


パネルディスカッションは、ディスクロージャー表彰会社の選定委員の座長を務めておられる伊藤邦雄教授ほか、会計士協会副会長の小宮山賢氏、ジェイユーラスIRの岩田宜子氏、ニッセイAMの田口彌氏、フォルティスAMの山本平氏らが出席されていました。


1時間のパネルディスカッションでしたので、あまり深く突っ込んだお話はなかったですが、日本企業のROEが世界最低レベルだということに関して、ジェイユーラスの岩田さんが、


「日本男子(企業?」)たるもの、欧米の指標であるROEなどにはとらわれない、(すべてのステークホルダーに配慮した)良い経営をしているのに何が悪い」という考えの会社も実際にあるんです、


ということを話されていて、これが結構、パネラーに波紋を呼んでいました。


新聞記事でどんな書かれ方をするのか分かりませんが、やっぱりそんな会社もあるんだなぁと、ビックリするやらあきれるやら。ちょっと触発された機会となりました。


ただ、ROEの水準が低い、という点については、パネラーの方々もマスコミの論調も、(企業年金連合会のいう)ROE8%という話ばかりが取り上げられていて、なぜ企業価値の向上のためにROEを上げないといけないのか、という視点が欠落しているように私には感じられます。


長期的な実証分析によれば、ROEを上げることが長期的には株価の上昇につながるんだ、ということを、マスコミが野村金融研究所とかに取材して、きちんと世間に伝えていかないから、


「ROEはてなマーク 何だ、そんな欧米の指標を持ち出してきて・・・。」


と、昔ながらの企業経営者の反発心を買ってしまうことにもなるのではないかと思います。


パネラーの皆さんなどには当たり前の話すぎて、その点の理解を広めることについて忘れているなぁ・・・、ともどかしく思いました。


ROEと企業価値の向上の関係については、こちらのトピックをご参照ください。


■東京IRセミナー「株主との関係構築とIR」

 http://ameblo.jp/ir-man/entry-10051640131.html

ともあれ、東証としても、ジャパン・パッシングだとかナッシングだとか言われて、外国人投資家から逃げられている日本株を盛り上げるために、「DISCLOSURE2008」というロゴを作ったり、東証IRフェスタを開催したり、上場企業のIR・ディスクロージャー意識を高めるとともに、個人投資家にきちんと開示情報に向き合ってほしいと、いろいろ努力をしているようです。


個人投資家の皆さんにも、長期投資のつもりでなくても、一応は企業のIR情報に目を通してみる、ということが普通になってくれたらありがたいことです。




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