日経新聞の記事によりますと、M&Aの会計処理で簿価方式を採用した案件は、過去1年余りの期間で3件にとどまったとのことです。
企業会計基準委員会の調査報告で明らかになったとされています。
この調査結果を受けて、同委員会は、簿価方式の廃止に向けて議論を進める見込みだそうです。
わが国の企業結合会計基準では、パーチェス法と持分プーリング法とが認められています。
(記事では、パーチェス法=時価方式、持分プーリング法=簿価方式、と簡単に書かれていますが・・・)
欧米の会計基準では、資産・負債を時価引継ぐパーチェス法が強制されており、日本の企業結合会計基準が整備された当時も、
日本には1対1の対等合併が多いんだから、
持分プーリング法は絶ーーーっ対 必要なんだ
という論調が多く見受けられました。
それは事後、日本の会計基準の特殊性、あるいは、国際会計基準とは異なった会計処理をしている国、とだんだん旗色が悪くなってきているのは、みなさんご存知のところだと思います。
当時の企業会計審議会の斎藤静樹教授も、各国相手にだいぶ奮闘されていたように記憶しています・・・。
ですが、最近読んだ「不思議の国のM&A」によりますと、
いくら対等合併を標榜していても、合併比率(究極的には、株式の交換比率にあたります)は、何がしかのプレミアムを加味して1対0.xxなどの形で決定されているわけですから、会計処理上、どちらかがどちらかを買収する形式と考えざるをえないケースがほとんどなのですね。
従業員に対するポリシー上の説明と、実際に行われる会計処理とは、ずいぶん違う、ということで。
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この本、ほんとに最近のM&A事情が適切に説明されていて、私もボンヤリとしか理解していなかった部分がクリアになったり、とってもお勧めです。すばらしい本だと思います。
んで、結局、企業会計基準委員会の調査では、2006年4月から2007年夏までの期間の有価証券報告書を集計してみると、パーチェス法は113件、持分プーリング法はたったの3件、ということで、実務上、ほとんど使われなくなってきたといえる状況になりつつあります。
企業結合会計基準のうえでも、持分プーリング法が使用できる条件は、厳しく規定されています。
例えば、次の要件をすべて満たす必要があります。
・支払対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること。
・議決権比率が等しいこと(50対50から上下概ね5%の範囲内なら認められる)。
・議決権比率以外の支配関係を示す一定の事実が存在しないこと。
経営統合など、1対1をうたいながら、交換比率が1対1でないケースは多数ありますよね。
やはり、各企業とも、自社の株主に対して、きちんと説明することが求められるようになってきたと思われますので、明らかに1株当たりの価値が異なるのに、無理やり1対1にはできませんものね。
会計理論から無理にパーチェス法に一本化させたというより、資本市場との対話のなかで、自然な流れとしてパーチェス法がほとんどになったという印象を私は持っています。
この点については、無理なく国際会計基準とのコンバージェンスが図られていくような気がします。
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