アメリカの機関投資家が、企業の情報開示において環境対策への取組みや環境対策コストなどの情報開示の強化を法制化するよう、SEC(米証券取引委員会)に要望書を提出したそうです(10/11付 日本経済新聞)。
要望書を提出したのは、世界最大級の年金を有する有名なカルパース(CalPERS:カリフォルニア州職員退職年金基金)のほか、カルスターズ(カリフォルニア州教職員退職年金基金)、ニューヨーク・ニューハンプシャー・バーモントなどの州政府職員の退職基金などを監督する22の機関投資家です。
■カルパース
彼らの運用残高は、合計で1兆5,000億ドル(約175兆円)にものぼるといいます。
(ちなみに、2005年のインドの名目GDPは約8,000億ドル、韓国は同7,800億ドル、日本は同4兆5,540億ドルです。by 総務省統計局・各国の主要指標 http://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/ap.pdf )
ケタ違いのマネーです。
米国は、京都議定書を批准していませんが、米国の主要企業は海外のすでに批准した国で活動しているため、投資家グループは、気候変動を財務・法務の両面で「経営リスク」と位置づけたようです。
新たな環境規制が導入されることにより追加コストが発生するとともに、消費者の環境志向が強まっていくため、米国企業が提供する商品の選択のされ方が変化していくリスクがあると考えられるからです。
現在のSECの情報開示ルールでは、こうした動きを反映できていないのだそうです。
要望書では、SECを通じて情報開示する企業のうち、「地球温暖化ガス」や「気候変動」が経営や業績に与える影響について情報開示しているのは約半数の49%だとしています。
電力会社は100%、石油・ガスは78%と記載の割合が高い反面、石油化学は28%、自動車はわずか15%にとどまっているそうで、業種間でも開示に格差があるのが実情らしいです。
まあ、投資家グループは、将来的な海面上昇、干ばつ、洪水、気温上昇などが業績に与える影響も開示するよう要求しているといい、「長期に運用する投資家は、(環境問題への)対応に遅れた企業には投資したくないと考えている」と伝えられます。
海面上昇、干ばつ、洪水、気温の上昇など、どれもこれも、「不都合な真実」で目の当たりにした光景がよみがえります。
■暑さと不都合な真実とSRI
http://ameblo.jp/ir-man/entry-10043671258.html
確かに海面上昇などの気候変動に基づく災害?が生じれば、海岸近くで操業している企業は、水没のリスクもあるでしょうし、それによる経済的な損失も発生するでしょう。
しかし、ものには程度ってものがありますから、どの程度(何m)海面上昇したらどのくらいの損失になるか、なんて、今の段階で記載せよ、と迫られても、訴訟リスクに敏感な米企業ではとてもじゃないけど書けないのでは
ともあれ、環境対策(CO2削減)コストなどが、大手の機関投資家にとって、企業業績や株価を左右する重要な投資判断の材料になってきたことは確かなようです。
上記の投資家グループのほかにも、SECに対して、ンベスター・ネットワーク・オン・クライメット・リスクというグループ(65社、運用合計4兆ドル)が、企業の温暖化ガスの排出削減コストの情報開示を迫ったり、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトという投資家・金融機関が集まったグループが9月末に欧米500社を調査のうえCO2削減の対応状況を公表しており、これまで以上の情報開示を求めているといいます。
カルパースは、「もの言う株主」としても、日本で有名な存在ですから、彼らが環境対応を投資の基準として重視し始めたということは、日本の企業年金連合会も早晩、大きな影響を受けてくる可能性が高いといえるでしょう。
■企業年金連合会
http://www.pfa.or.jp/top/index.html
日本の場合、サービス業などではまだまだ環境会計というか、環境コストの算定については遅れていると思われますが、企業年金連合会などが腰を上げて、投資の基準などに盛り込み始めると、対応が一気に進むと思われます。
IR上は、大変なこと、このうえないです
金額ベースの情報把握ではなく、物量ベース(電力使用量とか、紙の廃棄量だとか・・・)で情報を把握して、それを金額換算していくなんて、気が遠くなります。
いつかは求められるだろうなぁ・・・とは思っていますが、できれば、もっと先送りしたい、というのがホンネです(^^;
話は飛躍しますが、peterlynchさんが紹介されていたので、私も読んでみました。
■10年つきあう株を見つけよう!/澤上 篤人
http://ameblo.jp/peterlynch/entry-10049496137.html
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この本のなかで、澤上さんは、①次世代エネルギー、②食糧、③環境といった大きなテーマを掲げていまして、次世代エネルギーなどは非常にデカい相場になる、と考えているようです。
IRを考えた場合、自社の技術がこれらのテーマに即していたり、環境コストを削減できるキラー技術を持っていたりするなら、積極的に開示の方法を工夫していくほうがベターと考えられます。
ウチみたいな、そうでない会社(資源消費型・・・だな、やっぱり。)は、せめて環境対策コストの算出くらいはできるようになっていないと、IRのトレンドからまったく乗り遅れてしまいそう・・・。
あせります・・・
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