7/21付 日本経済新聞に、「監査法人、監査役に選任権、不正会計防止、独立性を強化」という記事が掲載されています。
法務省が2008年の臨時国会に提出する予定の会社法改正案に、監査法人の選任・報酬額決定権を監査役に与えることを盛り込む方針だとされます。
現行の会社法では、監査法人(会計監査人)の選任権限は取締役にあるという認識です(会社法第329条)。
329条では、役員(取締役・会計参与・監査役)及び会計監査人は株主総会の決議によって選任するとされていまして、結局、総会に上程する議案が取締役によって作成されるところから、実質的に監査法人の選任は、取締役によって行われているといってよい状態です。
ただし、会計監査人の選任等について、監査役(会)の同意を得なければならない(344条)とされています。
一方で、会計監査人の解任は、株主総会決議(第339条)か、監査役(監査委員会)によっても行える(340条)こととされています。さらに、会計監査人が欠けた場合には、監査役が一時会計監査人を選任しなければならない(346条4項)となっています。
つまり、現在の会社法では、会計監査人の解任や一時会計監査人の選任権限は監査役にあるけれども、肝心の最初の選任段階では同意権しかなく、実質的に監査役が会計監査人を選ぶ、ということができない建て付けになっているところが問題だとされていたわけです。
監査の厳格化を進めるにあたり、こうした問題点を改善するため、監査の取締役からの独立性をさらに高める目的で、会計監査人の選任権限を取締役から監査役に移すという転換を図ろうとしているものと考えられます。
(なお、委員会設置会社では、監査委員会が会計監査人の選任を行う(404条2項2号)ことになります。また、会計監査人(および一時会計監査人)の報酬については、取締役は監査役の同意を得なければならない(399条)とされています。)
委員会設置会社では、会計監査人の選任を監査委員会が行うのに対して、監査役(会)設置会社では取締役が会計監査人を選任するのであり、しかも、監査役の選任も実質的に取締役が行うわけですから、会計監査人の選任・報酬決定について、取締役の影響をなかなか排除できない現状にあるといえます。
(ちなみに、監査役会設置会社の監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならない(335条)とされており、また、取締役は監査役の選任議案を株主総会に提出する際に監査役(会)の同意を得なければならないとされています(343条)。)
法制審議会では、こうした会社法改正案の提出のほか、不正防止に向けた包括的な制度改革案をとりまとめる方向だとされていますので、どんな施策がとびだしてくるか、注目していきたいと思います。
IR担当者も社外からの視線が厳しくなっていますので、自らコーポレート・ガバナンスのあり方に留意せざるをえません。
(IR協議会の実態調査でも、IR担当者がコーポレート・ガバナンス報告書の作成に関わるケースが多くなっています。)
日経新聞では、
「以前から日本公認会計士協会は、会計監査人の選任や報酬の決定に関して、監査役の権限を強化するよう要望していた。」
としていますが、これは以前取り上げたこのトピックのことを指していると思われます。
■公認会計士法改正案と監査役強化のビミョーな関係
http://ameblo.jp/ir-man/entry-10030951588.html
常勤監査役が社内から選ばれているケースが多いとすると、どのていど実効性があるのか疑問がありますが、多少は、監査の独立性が高まると評価してよいのではないでしょうか。
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