聞いちゃった村上被告に実刑判決 | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

7/19、「聞いちゃった」の村上世彰被告(元村上ファンド代表)に東京地裁が実刑判決を言い渡しました。


http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2255975/1796145

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007071901000467.html

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070719ic04.htm

http://www.asahi.com/national/update/0719/TKY200707190311.html  など


2006年6月、ニッポン放送株のインサイダー取引容疑で逮捕された村上被告に、懲役2年追徴金11億5,000万円!! という実刑だそうです。


地裁では、村上被告を厳しく指弾したようです。


【証拠の信用性について】
 元ライブドア取締役の宮内さんなどの証言の信用性を高く評価しているようですが、村上被告の公判での供述は不自然きわまりないと信用していないようです。


 また、村上被告がライブドアの堀江さんからニッポン放送株の大量取得の話を聞いた際に、「到底本気とは思えず、インサイダー情報を聞いた認識はなかった」と主張したようですが、それは認めず、ライブドアが大量取得の実現を意図していたという認識および実現可能性の認識もあったと認定しています。


【事件の態様に関して】
 村上被告みずからライブドアをその気にさせたうえで、その回答としてインサイダー情報を受領したとしており、偶然「聞いちゃった」のではなく、「言わせた」といえると断じています。

 巨額の資金でみずからインサイダー状況を作り出し、あり余る資金で買い増しを続けるなど、一般投資家がマネできない特別な地位を利用した犯罪だと指摘しました。

 しかも、村上被告が、ファンドマネジャーと「モノ言う株主」としての活動を1人で行っており、村上ファンドの組織上の構造的欠陥があると考えているようです。


【悪質性について】

 保有するニッポン放送株の半分をライブドアに高値で引き取らせてまず利益を確定しており、しかも、ライブドアが大量買い付けを公表して株価が高騰した後、残りの大部分を売り抜け、再び利益を得ている点を取り上げ、非常に悪質だと考えているようです。
 「ファンドなのだから、安ければ買うし、高ければ売る」という徹底した利益至上主義には、慄然とするとしています。

 不公正な方法によって巨額の利益を得たことで、証券市場の信頼性を著しく損なったと強く非難しています。


【情状その他について】

 村上被告は、「モノ言う株主」として社会の耳目を集める一方で、裏ではこのようなインサイダー取引を実行していました。

 フジテレビとライブドアのニッポン放送の支配権をめぐる争いに乗じて、「漁夫の利を得た」と地裁は批判しており、一般投資家や村上ファンドへの投資者、さらには資本市場など社会的な影響ははかり知れません。

 しかも、ファンドからの払い戻し等を通じた個人的な利得のみならず、投資顧問料等の報酬という形で巨額の利得を得ています。これらは、一般投資家の犠牲のうえに成り立っている利得であるといえるでしょう。

 しかも、記者会見では謝罪の意思を表明しておきながら、法廷では「記者会見ではうそを言った」などと態度を一変させたうえ、一連の利得も保有し続けていることで、反省は皆無と裁判官の心証を害したようです。

 一方で、当該インサイダー取引は、個人的にもうけようという単純な意図ではなく、村上ファンドの戦略の一環であったという点で、悪質さが減殺される余地も残ると指摘しており、ファンド出資者のために行動した面を多少は評価しているようです。また、既にファンドは解散しており、村上被告が主催する会社は実体を失っているという点も酌量しているもよう。


【結論としては・・・】
 類を見ないほど巨額の買付け、ファンドマネジャーというプロによる犯罪であり、犯情自体も悪質。

 原状回復の手段がなく、追徴したとしても、剥奪できるのは、本件犯罪による利得の一部にとどまっています。

 市場の適正化・公正性を重視するため、インサイダー取引等を金融庁も厳しくみており、課徴金の額も大きくなっているなど、最近のトレンドも加味しているようです。

 こうしたことから、酌むべき事情を最大限に考慮しても懲役刑の実刑が相当だと判示しました。

法定刑の最高額の罰金刑を併科し、得られた財産を剥奪するために、11億円超もの追徴が相当であるとしています。


識者・弁護士さんらのコメントでは、インサイダー情報とみなされるには一定の実現可能性が必要とされるようですが、この判決では、可能性の高低は問題にならないとされているのだそうです。安全パイなのは、「実現可能性がまったくない」場合だと。


非常に恐いことです。


大層な計画や投資プランでも、会社の代表やわれわれIR担当者のような、それなりの人間が言ったことだと、受け取る側としては、実現可能性があると思った、と言われてしまえば・・・。

かといって、IR担当者が説明しているのに、大ボラかと思って歯牙にもかけない、っていうのも悲しいですが(笑)


突き詰めて考えていくと、機関投資家さんとのミーティングや、アクティビスト・ファンドとの意見交換なんて、インサイダー情報だらけじゃないかと思えてきます。


大口株主から、増配やら自己株買いなど、株主還元を要求されて、会社でいろいろ検討した結果、結局その通りのことをしたとした場合、その大口株主さんは問題ないのでしょうか?


ほんとに実行するぞという重要事実を聞いてないから大丈夫だと思いますが・・・、会社への提案とその受け入れ、ビミョーな気がしてしまうなぁ~。


(いや、本心から会社への提案など、アクティビスト的な行動は非難されるべきとか慎むべきなんて思ってないですよ。IR担当者としては、むしろ、そういった市場の声を吸い上げて、マネジメントに伝える責務があるんですから、どんどん行っていただきたいくらいです。単なる自問自答です(^^; )



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