上場廃止銘柄の売買が可能になる? | IR担当者のつぶやき

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上場企業に勤務する公認会計士の、IR担当者として、また、一個人投資家としての私的な「つぶやき」です。

ときどきIR担当者的株式投資の視点も。

4/14 日本経済新聞に、「日証協、上場廃止銘柄の売買で懇談会設置」と報じられています。


「 日本証券業協会は4月中にも、東京証券取引所などで上場廃止処分を受けた株式を売買する市場の新設を検討する懇談会を設ける。上場廃止になると個人投資家が換金する機会が乏しくなり、不利な価格で売却せざるを得ないケースが多いためだ。
 日証協は現在、非上場企業の株式を売買するグリーンシート制度を運営。一定のルールで証券会社が上場廃止となった銘柄や新興企業の株式などを扱っている。ただ同制度の対象は監査法人から適正意見の付いた財務諸表を開示できる企業に限るうえ、証券会社が継続的に価格を示す必要があるため、カネボウやライブドアなどは扱えなかった。
 新たに設ける懇談会は上場廃止銘柄の情報開示や売買に関するルールについても議論するとみられる。 」


私も持ってます。ライブドア株ドクロ

(といっても、上場廃止が決まってから、この先どんな風になっていくんだろう?何が送られてくるのかな?といった勉強のため、というか、興味本位での自己投資です。)


確かに、株式上場のメリットとして、いつでも売買可能な流動性が挙げられます。


日興コーディアルのときみたいに、上場廃止になりそうになったらごっそり買った外資系ファンドが会社そのものの売買、あるいは、事業投資として行うお大尽投資とは違って、個人投資家は流動性に乗って売買するしかない。


投資手法として、出来高の少ない好業績銘柄を狙い撃ちする方法もあるのでしょうけど、いざ売り抜けようとすると流動性がないため、思うように玉をさばけないリスクがありますよね。

そういう意味では、スティール・パートナーズが流動性の乏しい東証二部銘柄などをごっそり買い込んでいるのは、どうなんだろ?という気がしないでもありませんが。


それはともかく、上場廃止銘柄が売買できることになれば、少しは投資元本の回収ができることになり、投資家保護という観点では望ましいように思えます。


でも、それって、上場廃止になってないんじゃ?


(とはいえ、市場の認知度や、取扱い可能な証券会社の数等から言って、上場時と同じ賑わいが維持されるわけもないので、やはりジャンクな株式を売買する場、という位置付けになるものと思いますが・・・)



で、上記の記事で改めて興味をもったので、グリーンシート市場について少しお勉強してみました。


昔の店頭市場が今はJASDAQ”証券取引所”になってしまったので、店頭市場はなくなってしまったのかと思いがちですが、平成9年に創設されたグリーンシート市場は、非上場会社の株式を売買するための市場という位置づけであり、店頭市場という理解になると思います。


グリーンシート市場は、日本証券業協会が運営しています。

http://www.jsda.or.jp/html/greensheet/index.html


2007年4月1日現在、84銘柄が登録されており、エマージング50銘柄、オーディナリー26銘柄、フェニックス7銘柄、投信・SPC1銘柄となっています。


へぇ~、結構あるんだ・・・。フェニックスとかって、命名もかっこいいかも音譜


現在のグリーンシート銘柄のほかに、別の銘柄区分とか設けるのかな?

上場会社のことを Listed company とか言うので、上場廃止銘柄区分は、Delisted とかにするのかしらん叫び



・グリーンシート銘柄の情報開示、IRについて


グリーンシート市場のHPを見ると、「適時開示情報閲覧サービス」へのリンクがあり、それをクリック!すると、見慣れた画面が立ち上がってきます。そう、東証の適時開示情報のページです。


ふぅ~ん、てことは、グリーンシート銘柄の会社が、決算短信等を開示すると、東証のHPから見ている適時開示情報にも表示されるのかな?見た覚えがないけど。


試してみました。


グリーンシートのページで一番新しく気配値が提供され始めた(=グリーンシートへ新規登録された)会社で、ワンズ(証券コード2141)という会社がありました。
2/15~なので、東証の適時開示がさかのぼれる1ヶ月をもう過ぎてます。

ダメ元で、東証の適時開示のページから2141を検索すると・・・。


おぉ!ヒットしました!


4/5に「公認会計士等の異動について」というリリースを出しています。

検索結果には、ちゃんとグリーンシートを意味する「GR」という市場区分も表示されており、リリースそのものにもグリーンシートのロゴがヘッダーとしてはいっています。


なるほど~。グリーンシート銘柄であっても、TDNetは使えるんですねラブラブ

(TDNet: Timely Disclosure Networkといって、上場会社から各種開示情報を登録すると、東証等、取引所の担当官の確認後、一般に公開されていく情報開示システムです。)

TDNetをめぐる上場会社と証券取引所担当者のお話は、「ココがヘンだよ!新興企業のIRの時間」(http://ameblo.jp/ir-man/entry-10026918363.html )に載せていますので、是非ご覧ください。


PR等に熱心なグリーンシートの会社であれば、TDNetをうまく使うことによって、自社のIRを高められますね。


・グリーンシート銘柄の流動性について


しかし、一方で、そうしてIRしてグリーンシート銘柄に興味を持ってもらって、投資家が安心して売買できるような流動性が確保されているのかな?


日次で売買状況が公表されています。

http://www.jsda.or.jp/html/greensheet/jyoukyo/nitiji_index.html


4月の売買状況を見てみます。


さ、さぶいあせる


4/13の一日の売買高は、わずか8銘柄、売買代金は220万円也・・・。


これって、流動性がある、といえる状況なのかなー。

まぁ制度として、気配が表示されるわけだから、買おうと思えば買える、売ろうと思えば売れるのであって、完全に非公開の会社のように、あの会社買いたいけど売ってない、というのとは違いますからねぇ。

それにしても、この売買高では、市場を運営しているインフラコスト、人件費なんか出ませんよね・・・。


2006年一年間の売買状況を見てみますと、それでも一年間では32億2,900万円の売買代金があります。

(そのうち半分17億円弱をチッソ(4006)が占めていますけどね)

提供されているcsvデータをソートしてみると、一年間売買高ゼロの会社がなんと16銘柄も!!



むむむ・・・。


もしや、日本証券業協会は、グリーンシート市場の売買を活発にするために、上場廃止になったジャンク株式を誘致しようとしてるんじゃ・・・爆弾



・上場廃止銘柄の情報開示のクオリティは?


上場廃止にもいろんな理由があります。

一概に、経営破綻や粉飾決算ばかりではありません。

例えば、流動性や少数特定者持株比率の面で、上場廃止基準にひっかかって、猶予期間中に改善できなかったとか。

こういう会社は、公認会計士または監査法人の監査をしてもらって、適正または適法の監査報告書を添付せよ、ということを条件づけても大丈夫でしょう。


しかし、粉飾決算や虚偽記載が理由で上場廃止になった会社に関して、監査意見をつけろ、といっても、会計士のほうがリスクが高くて、監査報告書を添付できない可能性が非常に高いですよね。


「同じ上場廃止だし、この市場はそういう市場だから、参加する投資家は自己責任でねドキドキ 」なんてことは、言わないと思います。


上場廃止銘柄が開示する情報のクオリティをどうやって担保するかが最大の課題のような気がします。



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