産業再生機構(http://www.ircj.co.jp/index.html )が、3/15で解散を決議しました。
2003年の発足以降、ダイエーやカネボウなどを含め、41件の企業の支援を行い、法律で定められた期限よりも1年早い解散になりました。
支援完了による株式売却益などにより、400億円近い剰余金が生じる見通しと報じられています。
剰余金は政府が今後定める政令に基づき、国庫と出資者の預金保険機構、農林中金に分配されるとのこと。
3/18付 日経新聞では、産業再生機構出身の方々が、民間の再生支援会社または再生ファンドに散っていく様子を詳細に報じています。
松本順氏らのインフィニタム・パートナーズは、冨山和彦氏ら20人が設立する新会社へ合流。
松岡真宏氏、大西正一郎氏は、リサ・バートナーズと合弁でフロンティア・マネジメントを設立。ここには機構出身者7人のほか、外部の投資銀行家や弁護士、公認会計士も参画。企業再建の専門家集団を目指すという。
また、これらに先立ち、立石寿雄氏は05年秋に「ネクスト・キャピタル・パートナーズ」を、木村貴則氏は06年春に流通業専門のファンド、「クアトロ・エグゼキューションズ」を立ち上げている。
まさに、機構の中心人物たちが、キラ星のように日本の経済を変えるべく、散らばっていくようです。
現場では、メインバンクなどと激しいやりとりもあったでしょうが、終わってみれば、欧米の企業の売り買い(とそれに伴う人員整理・不採算部門の切り売り)のようなドライな再生、というよりは、日本的な企業再生を模索していた4年間、という印象ですね。
経済統計数値による評価はともかく、気持ち的には、産業再生機構は日本の経済の転機になったといえるのではないでしょうか。
【支援先企業一覧】(産業再生機構HP http://www.ircj.co.jp/shienkigyo.html より)
へぇ~、この企業も再生案件だったんだ、知らなかった(^^; という会社も。
機構のHPから「詳細」をクリックすると、各案件の再生スキーム等、詳しい情報を見ることができます。
ビジネス上の比較的ざっくりした評価などにも、参考になるかもしれません。
(興味のある方は、機構のHPがなくなってしまう前に、全件ダウンロードしておくことをおすすめします)
株式会社あさやホテル
株式会社アビバジャパン
株式会社アメックス協販等
株式会社うすい百貨店
株式会社大川荘
株式会社大阪マルビル
株式会社奥日光小西ホテル
株式会社オグラ
株式会社オーシーシー
カネボウ株式会社
金谷ホテル観光株式会社
株式会社釜屋旅館
関東自動車株式会社
株式会社鬼怒川温泉山水閣
鬼怒川グランドホテル株式会社
株式会社金門製作所
九州産業交通株式会社
株式会社金精
株式会社三景
粧連株式会社
スカイネットアジア航空株式会社
ダイア建設株式会社
株式会社ダイエー
株式会社大京
タイホー工業株式会社
株式会社田中屋
玉野総合コンサルタント株式会社
株式会社津松菱
栃木皮革株式会社
服部玩具株式会社
株式会社フェニックス
富士油業株式会社
株式会社フレック
株式会社ホテル四季彩
株式会社マツヤデンキ
ミサワホームホールディングス株式会社
三井鉱山株式会社
宮崎交通株式会社
株式会社ミヤノ
株式会社明成商会
八神商事株式会社
【役員退職慰労金について】http://www.ircj.co.jp/pdf/sonota_news_2007031601.pdf
代表取締役A氏 16,887千円(4年間)
取締役B氏 15,803千円
など、活躍されたわりには、「えっ、それだけ!?」という印象。
むしろ、ご本人たちにとっては、得られたノウハウが何よりの退職金なのかもしれません。
【支援基準等】http://www8.cao.go.jp/sangyo/siennkijyun.pdf
産業再生機構の支援基準って、どんなだったかご存知でした?
<支援決定基準>
次の(1)~(5)のいずれも満たすこと。
(1) 申込事業者が、買取決定が行われると見込まれる日から3年以内に、次に掲げる①生産性向上基準及び②財務健全化基準を満たすこと。ただし、当該事業者の属する事業分野の特性等を勘案し、合理的と認められる特段の事情があると産業再生委員会が認める場合は、これを硬直的に適用することとはしない。
① 生産性向上基準
次のa)からd)までのいずれかを満たすこと。
a) 自己資本当期純利益率(注)が2%ポイント以上向上
b) 有形固定資産回転率が5%以上向上
c) 従業員1人当たり付加価値額が6%以上向上
d) a)からc)までに相当する生産性の向上を示す他の指標の改善
(注) 企業再生ファンド、他の事業会社等による事業の買収、他の事業者と共同して行う事業統合等の事業再編を伴う場合にあっては、当該事業部門の属する事業分野の特性に応じて、総資産減価償却費前営業利益率、総資産研究開発費前営業利益率又は総資産減価償却費前研究開発費前営業利益率のいずれかの指標を選択することができる。
② 財務健全化基準
次のa)及びb)のいずれも満たすこと。
a)有利子負債のキャッシュフローに対する比率が10倍以内(注)
b) 経常収入が経常支出を上回ること
(注) (有利子負債合計額-現預金-信用度の高い有価証券等の評価額-運転資金の額)/(留保利益+減価償却費+引当金増減) ≦ 10
(2) 申込事業者を支援決定時点で清算した場合の当該事業者に対する債権の価値を、事業再生計画を実施した場合の当該債権の価値が下回らないと見込まれること。
(3) 買取決定が行われると見込まれる日から3年以内に、新たなスポンサーの関与等により申込事業者の資金調達(リファイナンス)が可能な状況となる等、機構が当該事業者の債権の買取りを行った場合に、当該債権の処分が可能となる蓋然性が高いと見込まれること。
(4) 過剰供給構造にある事業分野に属する事業を有する事業者については、事業再生計画の実施が過剰供給構造の解消を妨げるものでないこと。
(5) 申込事業者が、労働組合等と事業再生計画の内容等について話合いを行ったこと又は行う予定であること。
ほかにも、買取決定基準や建設業の場合の基準等があります。
支援決定基準でいえば、そんなに高いハードルを掲げていたというわけではないんですね。
ROEで2%アップ、従業員1人当たり付加価値額で6%アップかぁ・・・。10%アップというと、ぐっとくるものがありますが、5%と抑えずに6%というところが微妙なラインですね。
また、有利子負債・キャッシュフロー比率が10倍以内というのも、やや緩い印象。ただ、経常収入>経常支出といっていますから、ざっくり、キャッシュフロー的には黒字化を目指すということですよね。
本当に駆け込んでいた企業にとっては、結構大変なラインだったのでしょう。
過剰供給構造の解消、という定性的な判断が入っていることもポイントですかね。
これまであまり、産業再生機構について、真剣に調べていませんでしたが、解散を決めてから、初めてその活動内容に興味が湧きました。
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