主治医から余命と今後の治療方針の流れを聞いてから、その後血液検査をして家に帰った。それから1時間半車で走って家に帰るまでに、さてこれからどうしたらいいのか考えた。

 

俺は自分が勤めていた総合病院のすぐ横の借家だ。子供が4人いるのし、両親を迎えるほどの部屋はないので、家に帰ったその足ですぐに不動産屋に足を運んだ。近くにアパート借りてそこから通院させるのがいいだろうと。

 

うちから徒歩2分くらいのところに1Kの賃貸マンションに空きがあった。不動産屋さんに案内されて早速部屋を見に言った。

部屋の間取りと中をすぐに写メールで実家にいる姉貴に送った。すぐにでも契約して治療の備えようとしたが、姉貴がこんなことを言い出した。

 

「放射線治療と抗がん剤治療したらもう後には引き返せん。もう絶対治らん。まだできる事がある。」

 

姉貴はいわゆる自然志向が強い人で、無添加、無農薬、非ワクチン、脱原発の人。俺も姉ほどではないけどもともとそう言う志向の人間だけど、姉の方は徹底していた。旦那の職業も無農薬の野菜売り。周りの人たちも同じような感じだったし、Facebookでもそういう系の人と情報交換して、癌の治療についても、一般的には常識と言われている抗がん剤治療、放射線治療などはそれをしてしまったら人間が本来持つ回復力を失ってしまうという。

 

そういう類の話でいうと「内海聡」という医師がFacebookでは有名で、その人の書く記事や本も読んだ事はある。読む限り頷ける話ばかりで筋が通っていて、感覚的にこの人たちが言うことの方が正しそうだなと思っていた。でも、いざ自分の親父が癌になったと言う事実を目の前にすると、まっさきに今までの常識の壁がそびえ立っていて、全部嘘でそれ以外の治療の選択をするためにはその壁を乗り越えなければそこに至らない。俺は、それを乗り越えることはできないと思ったけど、姉貴は違った。

 

「Facebookの友達で池田先生っていう青森の医者がいるんだけど、その人が食事療法で必ず直せるって言ってる。それを試して見る価値があると思う。」

 

真剣にそう言った。

 

そのFacebookで繋がっているという池田先生の素性は俺は分からないけど、どうせ抗がん剤と放射線あてたとしてもあと3ヶ月ほどって言われてるのなら、試して見る価値はあるのかもしれないと思った。おかんも、親父の性格からして抗がん剤治療とかは耐えることができないと思うし、もし助かる見込みがあるならと少しの希望を抱いた。親父は。。。あまり状況を理解していなかった。

 

俺から親父に電話で伝えた。

 

「父ちゃん、日赤の先生がね言うには父ちゃんは肺がんのステージ4で、治療が難しい状況。放射線治療と抗がん剤治療を勧められたけど、それやってもなかなか厳しいんだって。それでね、姉貴が食事療法の先生を知り合いでね、とりあえずその先生の言う通りに食事療法を頑張ってやって見たほうがええと思う。食べるものに色々制限があるけど、頑張ってやったら癌も治るらしいけー、母ちゃんと姉貴の言うことを腹を立てんこー聞いて頑張ろうや。」

 

と説明しながら俺は自然と泣いていた。

 

「そうか。分かったよ。おおきによ。」

 

と優しい声で答えた。