池田医師と姉貴はFacebookのメッセンジャーでやり取りを重ねていた。彼は姉貴に「私の言う通りにすればお父さんは必ず治ります。」と言った。
現代医学に見放された者にとっては、この言葉を信じてやるしかなかった。
彼はとにかく、いかに腸内細菌を増やすことが大切であり、それに関する研究内容をノートにまとめてそれをFacebook上に公開していた。Facebookの友達の中には医師らも多く存在していて、その研究内容についても医師らも皆口を揃えて賛称していた。
また、腸内細菌を増やすために、調味料から食材まで、無添加無農薬の物にこだわっているだけではなく、1日1食生活を実践していた。
1日1食生活と言うのは、基本的に食事をすると言うこと自体が体に負担をかけることであり、特に現代のような食品添加物や農薬、放射能が溢れている社会で、何を食べるかよりも、何を食べないかが重要という視点も大切にしている。実は自分自身、その半年前に仕事に行き詰まった時に気分転換のために実践していたこともあった。
実践して分かったことは、1日1食で全然生きていけるし、身体が軽くなり、精神が安定し、集中力が上がった。夜は好きなものを好きなだけ食ってぐっすり眠れた。小遣いも減らなくなった。ディメリットと言えば家族、友達、同僚と昼飯が食えなくなること。特に昼に好きなラーメンが食えないこと。気を抜くと痩せすぎる。まあ、自分的にはメリットの方が圧倒的に多かった。それと同時に、世の中にはいかに物が溢れているかを実感した。
それを池田医師も実践していて、池田医師がノートで公開している内容も、医者の研究みたいなもんなんで難しい事を並べて書いているのだが、自分なりに信憑性も感じていた。
ただし、1人オーリングテストを遠隔で行うという事についてはどうしても信用できない。
「今、あなたのお父さんの腸内細菌叢は1000です。いいですね、この調子で頑張りましょう!」
と青森からメッセンジャーで姉貴に送ってくる。普通は信じれない。だけど、追い込まれた家族はオカルトでも信じたい。そんの変な感じだった。
最初は調味料の選び方とかだけ教えてくれていたのが、徐々に自分が作ったという腸内細菌叢を増やす高額なサプリを勧めてきた。1ヶ月分で1本13万とか、そんな金額だったと思う。
姉貴は高いけどそれで本当に癌が治ったら安いもんよと言っておかんに購入を勧めた。藁にもすがる思いのおかんは、まあ、こういう時のためにと思って少しだけ貯めたお金があるからと言って、まず1本購入した。
俺は、怪しいと言いながらも買うなとは言い切れなかった。俺もそれでも信じたいって思っていた。