状況証拠その1 | ふりちんの寅のブログ

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地獄の入り口はその日に口を開けて待っていた。

その日私の日常生活を送ろうとしていた。

普通の男性の日常生活とは少し異なるのかも知れない。


いわゆる髪結い亭主の生活を送る私は

一週間分の女房と自分の洗濯物を自転車の前籠に載せて

コインランドリーに向かってペダルをこいでいた。


そこで小さなトラブルに巻き込まれた。

ランドリーの手前でとある男を追い抜きざまに

男をこすってしまったのだ。


男は私の腕を掴んで自転車を停めた

ちょうどその頃は自転車事故の多さとマナーの悪さが

世間で問題になり始めており、警察も自転車の取り締まりに

異常なほど力を入れだしていたのだ


男はその世情を見方に私の自転車の追い抜き方に

マナーの悪さを見出したのか

自転車が男の体をこすったと文句を言ってきた


ぶつかったいう認識は私には無かった

そこでこすったという表現を使っているのだが。

確かに少し急いではいたので乱暴な運転ではあった。

向こうから来た高校生の自転車を避けるために多少の蛇行運転に

なったがこすったというのもオーバーなのだ

歩行者の前に飛び出したために不安をあおったのだろう



ランドリーの洗濯機に汚れ物を突っ込んで

夕方の開放台を狙ってパチンコ屋に急いでいたのだ

自転車を降りて男に謝罪をしたのだが

そのしつこさと居丈高さにむっとした私と男は

公園の入り口付近で口論になった。


そこへ巡回中の警官が通りかかり

交番で話し合いをするということで交番に移動したのだ。

警官は中立だと信じていた。

「まあ、そう興奮せずにお互い冷静に話しましょう。

私が中立の立場でお互いの言い分を聞きますから」


警官は交番の机の前に椅子を二つ並べて

われわれを座らせてメモを取り始めた

「確かに自転車の方のマナーも悪いが

謝罪する人の腕を掴んだり体をゆすったり

してはいけませんよ」

「そこなんです。謝罪してるのに私のコートの袖を掴んで

暴力をふるおうとした」

「俺が掴んでないと逃げたろう」


言うことはお互い平行線だ

自転車がこすったことより

その後の態度のほうがお互いの心象を害したと

言い合いになった。

「お互いに謝ってまだ一歩も引かないのなら

事情聴取という形で一応書式を取る形になりますが・・」

「なんで俺が謝んなくっちゃならねえんだよ」


男は交通警備員のアルバイトをしており

普段から自転車のマナーの悪さに相当憤慨を溜め込んでいるのか

多少一般市民に対して高圧的な居丈高な態度であった


警官の制服とよく似た警備員の制服を着こんで

あくまで自分の行動は法律を遵守して正しい行動といわんばかりだ

むしろその服装に守られて警察官の仕事の代行を行うといった

高圧的な態度が鼻をついた


交番にはもう一人私らより高齢な警官が一人おり

仲裁役をかって出たのだが年齢ではそれは治めることができなかった

「一応身分を証明できるものを見せてもらえますか。

免許証で結構ですよ。一応コピーをとらせてもらいますがいいですね。

確認ですが、過去警察のお世話になったことは・・・ありませんね」

男と私は憮然とした態度で免許を警官に渡し、警官の質問にうなづいた。


私は警官の態度にイラついていた

中立だと言っていたが、今では容疑者扱いではないか

私はむしろ被害者の立場なのだ


コピー機を操作しながら

「多少時間がかかりますよ。事情聴取というのは

正式な書類なので手順を踏んで書き取っていきますからね」

「あーもう!アルバイト遅刻じゃないか。ちょっと電話させてもらいますよ。

あ、もしもし高木です。ちょっと事件に巻き込まれて間にあいそうにないんですけど

え、はい。まあ、1時間程度・・・はい。連絡を入れます。はい」

「あなたの都合は?」

「私は・・・予定はありません。洗濯に行く途中ですが」

「なんでコインランドリーにそんな急いでいたの?」


パチンコへ急いでいたとは言えなかった

そう答えてしまえば、まるで遊び人であることを証明しているみたいなものだ。


そこへ交番の電話が鳴った。

「はい、〇〇駅前交番。え、空き巣?解りました。今から警官が

そちらに向かいます。住所は?・・はい。・・名前を・・はい。了解しました。

・・・おい。田村、空き巣被害だそうだ。お前そっちを聞いてきてくれ」

若い警官は自転車をガチャガチャ言わせてあわてて出かけて行った。


「まずあなたからね。仕事は警備保障のアルバイト・・ね。

いつもその格好で現場に?私服で行って現場で着替えることは無いわけ?

あんまりよくないですよね。そういった格好は一般市民に誤解を招きやすい

ですよね。あなた方はあくまで警備保障であって、警官ではありませんから・・

普段はその格好の上にコートかジャンパーを羽織る・・そこは会社からも

そういう指導を受けてるわけね・・」


その時どん!と地面を突き上げるような音と振動が起こった。

「ん、事故か!?・・・」

警官は急いで立ち上がると交番の前に飛び出した。

一・二分左右の通りの様子を窺っていたが

やがて何事も無かったように交番内に戻ってきた。

「えーと、じゃあなたの話を聞きましょうか。仕事は・・」

私は妻が始めた趣味のネイルショップが上手く事業ペースに

載り始めていたので仕事を辞め、主夫業をしていた。


だから世間でいう髪結いの亭主なのだ。

本当はこの不景気にリストラで会社を解雇されて

職安に仕事を求めにいくふりをして、失業保険を貰いながら

パチンコをして遊び暮らしていたのだ。


小遣いは女房の稼ぎで何とかなりそうだと

真剣に仕事を探す気はなくなっていた。

女房の家事仕事を私が替わりにやって

主夫になるのもいい人生かも知れないと考え始めていた


主婦なんて楽なものである

亭主を仕事に送り出すとあとは自由時間である

掃除、洗濯をして後はテレビを見て時間をつぶせばよい。

掃除は気が向かなければやらなくても死ぬわけでない

二日に一回、三日に一回で多少汚くなっても目をつぶればよいのだ。

洗濯物は一週間に一回か三日に一回。

機械に汚れ物を入れておけば後はスイッチを入れればやってくれる。

天気が良ければ干すだけだ。

天気が悪いと洗濯もコインランドリーでいくらかのコイン数枚で機械任せでよい。


しかし、世間的に人の目は気になる。

まして警官に対して仕事は?と聞かれると非常に気まずい。

「えー、ま、求職中というのか・・・・会社を退職して・・」

「じゃ、無職ですね」

「無職というか、営業課長だったんですが。不動産業の」

「でも会社を辞めたんですよね。会社を離れたら不動産業も営業課長も関係ありません。

今は無職ということになります」


無職というものはこういうものか。

身分を剥奪されると急に心細くなるものだ

まるで犯罪者の扱いではないか。


またそこへ電話が鳴った。

「はい。駅前交番です。何、ガス爆発?さっきの音は爆発音ですか?

現場は?今メモを取ります・・・え、美容院の入ったビル・・解ります。

本署から応援に3名こっちに向かっている・・ありがとうございます。

私も現場に向かいます・・」

電話を切ると消防車のサイレンが聞こえた。

消防車も向かっているようだ。

さっきの爆発音から1分も経っているか。


「ちょっと問題が起きた。ガス爆発だそうだ。

本官は現場に向かわなければならないが、しばらく待ってもらえますか。

いや、事情聴取の最中ですから。そんな簡単に止めるという風にはいきませんよ。

すぐ戻りますから。ええ、本署から応援が来てますから・・・簡単に説明をしてすぐ戻ります」


「どこのビル?ああ、あそこか。そういえば最近工事の職人が出入りしてましたよ。

ガス工事だったのか・・」と警官に話しかけたが、警官は相手にしない。

独り言をつぶやいた形になってしまった。

「じゃあ、時間もっとかかりますよね。バイト先に電話しなきゃ・・今日は休むしかないか・・

お巡りさん、ちょっと会社に電話しますので事情を説明してもらえますか」

「私が電話で説明する事じゃないでしょう」

「でも休むのは事件の照明をしてもらえないとズル休みになってしまうんで」

「後で証明書にハンコ押しますので、先に会社へはあなたが説明してください。

その話しはあとあと・・じゃ、本官は現場に行きますので」


「すぐ戻るから」と言い残して警官は自転車に乗って行った。

交番には男と私が残された形になった。

お互い無言である。

私は手持ち無沙汰に壁に張ってある町内地図を眺めて

「ああ、ここのビルかあ・・ここは一方通行が多いんだよな」などと独り言を続けた。


しかし、つまらぬ事から時間をつぶされた。

相手の男は一日分のアルバイトの収入まで失うのかも知れない。

そのときはまだその程度ののんびりした問題だったのだが。


つづく