カリンちゃんに回覧板を回すために部屋をノックしてみた。
「あ、大家さん」
「あの、回覧板です。いや、町内会に入ってくださいって下らんお知らせですよ。いいの、いいの。こんなの。入ると金は取られるわ、ゴミ当番は回ってくるわで、ま、アパートの住人さんには関係ないんじゃが、一応目は通してもらったほうがいいかと・・」
「はあ」
「へえ・・さすが女の子の部屋は明るいなあ。ぬいぐるみ沢山持ってるんだね。」
「ええ、可愛いでしょ」
「あ、うん。ところでベッドをこう置いてみたらどうかな?」
「え?なんで?」
「いや、北枕になるかなあ・・って思って」
「北枕ですか?北ってこっち?あっちじゃないですか?朝日はこっちから昇ってくるから」
指を刺しながらくるくる廻ってる。
「あ、北はこっちだなあ、階段登ってきたら方向がおかしくなったようじゃ」
「うふふ。変な大家さん」
「あ、あの部屋の使い勝手はどう?」
「ええ広さも丁度いいし、よく日が入ってまぶしいくらい」
「それは良かった。何でも困ったことあったら声掛けてください。手伝いますよ。ベッドの移動なんか一人じゃ大変だしね」
「え、べっど?」
「たまには模様替えをしたら気分も変わるし・・」
「こないだ引っ越してきたばかりだし」
「あ、そうだよね、うん、そっか」
「回覧板ここに判子押せばいいですか」
「はい。じゃお隣にはわしが持って行くから・・はい、戸締り気をつけてね」
やべえ、やべえ。無理にベッドの話は不味かったかな。
さて舞ちゃんは・・・あ、まだお仕事かな?
じゃ、響子ちゃん。
「はい?」
「回覧板です」
「あ、大家さん」
「目だけ通して・・・軽く読むだけでいいから、うん」
「会費払ったほうがいいですか?」
「いいのいいの。そんなもん。テレビの位置、見難くない?」
「ベッドで寝ながらみるのに丁度ここがいいです」
「あ、そう」
「北枕とか気にしない?」
「え、北枕になってます?いやだあ」
「いや、わしもどっちが北かよく理解できてないんじゃが。確か女房が死んだときに布団をそっち向けて敷いたような・・・」
「じゃ、今日からベッドにさかさまに寝ます」
「さ、さかさま!」
「ええ、頭をこっちにして」
「はあ、そんな考え方もあるわなぁ・・」
「枕だけ移動すれば済みますから、ネ」
「ま、お母さんによろしくお伝えください、はい、ごめんなさいよ」
はぁ~なかなかアングルは変わらんようじゃ・・・