色づきの秋(とき) | ふりちんの寅のブログ

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    「色づきの秋(時)」



かにの床屋、これが由美の父親のお店の名前である。


父親の善次郎は床屋一筋60年を自慢の一つにしている。


客は地元の商店街の主人や子供たちを中心に支えられてなんとか生き残っている店だ。


若い頃のことはよく知らないが母と結婚して夫婦で何とか店を二人三脚で切りもりし


一人っ子の私を育てて呉れた。


私の名前は蟹江由美、十九歳。


母は二年前に脳梗塞で倒れ、一年間寝たきりで病院と自宅で治療を繰り返したが


一度も起き上がることなく去年亡くなった。


父は一人で店を守り、私は学校と主婦業とつたないながらも母の代りに父の手伝いをしてきた。


高校二年の時に母が倒れたのは悲しかったが悲しんでばかりはいられない。


母の看病に病院に行ったり自宅で看病したりと人生でこんなに忙しい時期はもう来ないだろう。


朝早くにお弁当を作り、父の朝食、母のおかゆを作り学校へ行き、放課後遊ぶことも無く


急いで帰りにスーパーにより買い物をし夕食を作り、お店にも出て掃除や洗濯、お客さんの


洗髪、マッサージなどを手伝いへとへとに疲れて夢も見ないで寝るという日々を繰り返した。


父も母の抜けたぶん一人で頑張ってきた。


床屋は休業補償など無いし、母の病院代も稼がなくてならないので店を休むわけには行かなかった。


高校を卒業する前に痛いも辛いも声を発しなくなっていた母は眠るように旅立った。


進学を諦めて受験勉強はしなくてよくなった時間を母の看病に当てる事が出来たし、


父の口癖は手に職を持て、だったから一夜父と相談してあっさり進路をマッサージの専門学校に変え


て、来年は卒業して資格も取れる。


母の床ずれを痛々しく思いマッサージを続けるうちに人の役に立てる仕事と思ったし、家業の床屋


にも使えると思ったのだ。


でも学校で学んでいくうちに美容マッサージと言うものがあることを知り、私はコース変更を申し


出て学校も認めてくれた。将来の夢はエステシャンとなりきれいなお店を持ちたい。


その学校で知りあった下地というボーイフレンドを母の一周忌が終わったのを期に


父に紹介しようと思っている。


「ねえ、お父さん。お父さんに彼を紹介したいんだけど・・・」


「紹介って、まさか結婚・・・」


「違うわよ。いつもお父さん言ってたじゃない。彼が出来たら隠さず紹介しろって」


「ああ、そうか。ドキッとしたよ。お母さんが亡くなってすぐにお前がいなくなる・・・と思ったから」


「まだ大丈夫。あと何年かはお父さんのそばにいる。だってお店だって一人じゃむりでしょ?」


「いや、店のことは気にするな。学校を卒業したらお前は成人だもんな。自分の好きな道で


生きろ、好きな人を見つけてな」


「強がり言って。これでも私は店の看板娘のつもりなんですからね!」


「実際助かってる、感謝してるよ。由美がシャンプーをやってくれるようになって客筋も変化が


出てきたもんな。若い人が来てくれるようになったし・・・お店が明るくなったって」


「でしょう?その為にマッサージの学校で勉強したんだから」


「男の客はババアより若い娘がマッサージやシャンプーをして貰ったほうが嬉しい」


「ババアだなんて母さんが仏壇で起こってるわよ」


「かあさーん、冗談だよー」


「でね、今度の日曜日に彼を招待して一緒に夕食を囲もうとおもってるんだけど」


「ああ、いいよ。で、その友達とはどういう・・・」


「学校の友達で年は27って私より随分上なんだけど。彼は苦労していて調理師やクレーンや整体や色んな


資格を持ってるの。今の学校卒業したら会計士の免許も取るんだって」


「ほ~う。で、結婚を考えてるのか?」


「だからただの友達よ。結婚なんて・・・彼は大人だから他の友達が幼く見えて」


「まあ、何でも正直にお父さんに言ってくれるのは嬉しいよ」




次の日曜日、由美は夕方前に駅に彼を迎えに行った。


商店街を案内しながら買い物をして家に戻った。


擦りガラスを覗くと店にお客さんはなく、お店のドアを開けて父に声をかけた。


ちりりりん。


「お父さん、この人が下地さん」


「はじめまして、下地です。由美さんが一緒に食事をって誘ってもらったんでずうずうしくも


お邪魔しました」


「やあ、こんにちわ。由美がお世話になってるそうで。まだまだ子供でご迷惑をかけてるんじゃ


無いですか」


「いや、由美さんはしっかりしてます。由美さんを見てると僕もしっかりしなきゃって」


「下地さんは調理師の免許も持ってるの。今日は美味しいものを作ってくれるって」


「おいおい。由美が招待したんじゃ無いのか」


「だって美味しい物食べられるほうがいいでしょ?」


「魚やさん覘いたら粋のいいヒラメがあったんで、刺身でも造りますよ」


「ほーそりゃ楽しみだ」


「ね、お父さんもお母さんが病気になって一度もお酒飲んでないでしょ。今日は一本つけるからね」


「そうか。かあさんの一周忌も無事済んだことだし、飲ませて貰おうかな。7時までは店を閉めるわけには


行きませんので、ま、上がってゆっくりして行ってください」


「ゆっくりなんてしてられないわ。さ、下地さん、仕込み仕込み!」



7時近くになってドアの鈴が鳴った。


「善ちゃん、遅くなったけどいいかな?」


「おう、商店街会長さんのお出ましか」


「みんなのところ回ってたら遅くなっちまって」


「今日はパンチパーマはダメだよ。お客さんがきてるんだ」


「いや、顔そりとセットだけでいいんだ」


「おいおい、また紅葉のママの店かい?」


「えへへ、ま、当たりだ」


「カミさんの角が出ないようにほどほどにな」


「いや、連絡業務だよ。商店街のバス旅行のお知らせ。ついでに売り上げ協力さ」


「電話で済むんじゃないの?」


「だから売り上げ協力って言ったろ」


「で、旅行って?」


「ああ、善ちゃんにも伝えなきゃな。おかみさん一周忌も済んだんだから参加しなよ。


秋の紅葉ツアーを計画してるんだ。紅葉見て温泉浸かって、マツタケ御膳。どう?」


「いや、やめとこう。商店街の夫婦の仲の良いとこ見せつけられて俺だけ一人じゃな」


「カップルたってじじとばばのカップルなんて妬けやしめえ。なんならうちの母ちゃん貸すぞ。


俺は紅葉のママと・・・」


「そんな事言うからかみさんが怒るんだよ」


商店街会長はありがたいお客さんだ、馬鹿話をしながらもちゃんと金を払って顔そりをやらせてくれる。


「どうしたの?善ちゃん、なんか嬉しそうだぜ。ニヤついて。お客さんに関係ありか?」


「え、いやそんなんじゃないけど。実は由美が彼氏を連れてくるって・・・」


「おいおい、ニヤついてる場合か。娘取られちまうんだぞ」


「さっき会ったけど結構しっかりした男なんだ。手に職をつけて資格もいっぱい持ってるらしい。


由美も結婚相手じゃないって。ただのボーイフレンドだそうだ」


「なに暢気な事、言ってんの!ボーイフレンドから恋人になるんじゃないの・・・でもあの由美ちゃんに


もとうとう男が出来たか・・・綺麗になったもんな」


「男じゃないって!ささ、早いとこ紅葉のママの酌で飲んでこい」


「おうおう。普段よりいい男に仕上げといてくれたか?」


「何言ってんの。普段は男は見かけじゃなくて心意気だなんて言ってるくせに」


「ああ、アリガトな。バスツアー考えといて。後で回覧回すから・・」




「大体揃ったわね。さすが料理人ね。手際が違うわ」


「調理人は造りながら洗い物をする。余計に散らかさない、これが大事なんだ」


「ご招待の心算が仕事させちゃってごめんなさい」


「いいよ。好きなんだ。料理」


「も、一つお願いがあるんだけど・・・ずうずうしいかな」


「なんだよ?気になるよ。何でも言ってよ」


「あのね、下地さんにマッサージして欲しいの、お父さんを・・・


父は職人気質で絶対疲れたって言わない人だけど母が病気になって文句一つ言わず


頑張ってきた。私も時々肩揉んであげるけどカッチカチなのよ。女の力じゃとても揉みほぐせないわ。


だから男の人の力で揉んであげて欲しいの。」


「なんだそんな事か・・・いいよ。練習にもなる」


「あと・・・まだ結婚の話はしないでね。今日はただの友達って紹介するから」


「分かってる。今日はお父さんに気に入ってもらうことが大事」







店の看板灯を仕舞い、電気を消して部屋に戻ろうと廊下を急ぐ。


手早く片付けた心算だが7時半をまわってしまった。


障子戸に手をかけて足が動かなくなった。




「食事の前に父を優しく揉んでもらいたいの」


「ああ、喜んで。僕でよければ」




バシン。いきなり障子が開いて勢いで仏壇の母の写真が倒れた。


「由美!お前という奴は!部屋に行ってなさい。


下地君とか言ったな。帰ってくれ!


何がヒラメの刺身だ。泥棒ネコみたいな真似しやがって!」


「お父さん、いきなり何を言ってるの?」


「お前もお母さんの仏壇の前でなんてふしだらな・・・帰ってくれ。兎に角今日は 帰れ!



「どうしたの?お父さん。何をいきなり怒ってるの?訳を言って!」


「俺は・・お父さんはナ・・・お前を信じていた・・・いつからそんな・・」


善次郎のこんなに怒った姿を見たことはなかった。


「下地さん、ごめんなさい。兎に角今日は帰って。後で連絡するから、ゴメン」



下地を泣きながら送りだすと由美は父の前に座った。



「ね、お父さん。落ち着いて!何で怒ってるのか言ってよ!」


「お前、まだそんな事を。え、お母さんの写真の前で恥ずかしくないのか!」


「恥ずかしいって何が・・・」


「ただの友達だって言うから家に上げたのに」


「だから、どうしたのよ!」


「ち、ちちをもんでほしいだなんて・・・そんなふしだらな娘に育てた覚えはない・・・うぅぅ」


「パシン!お父さんの馬鹿!」





善次郎の頬には由美の付けた紅葉の手形が赤く染まり始めていた。



                                    おわり





エロくは無かったですね。期待した人ごめんなさい。