神崎巡査は次の日も漫画を読んで過ごす。
「この漫画はなんか難しいな、俺は推理小説苦手だし、えーと、何でLはこう決めるのかな?あー前に戻ろう・・・あ、そうか。ッそういうことか」
なかなか理解できない。神崎巡査は飛ばし飛ばし読む。なおさら解らない。
「どうだね?読み終わったか?」
「はいっ!3度目を読んでおります」
ウソじゃない。確かに解らない部分は何度も読んだのだ。理解度は別にして。
「じゃ、今度はこのファイルを読んでくれ」
「はいっ!で、事件とはどんな・・」
「その漫画のような事件が起こっている」
あわてて漫画を読み出した。
「おい。漫画じゃなくてファイルに目を通せ!」
「は、じ、実はまだ読んでませんでした」
「はぁ~、日本の警察も崩壊が近いな・・・」
リュウザキ管理官は時間と手間をかけて神埼巡査に噛んで含めるように説明した。
「はあ~悪い奴がおるモンですなあ。え!犯人は高校生!今の子供は何を考えてるのか・・、いやはや親の顔が見てみたいですな」
「どーぞ」管理官は手鏡を渡す。
「は、どうも」
「見たか?」
「はあ?」
「親の顔だよ」
「はあ?」
兎に角、神埼巡査は鈍い。
「いいか、俺のプロファイリングによると神埼君の息子が99.4㌫犯人だ」
蓑田の苦労の末のお手柄を自分の手腕のごとく言い切った。
「ええええ!」
「何にも同じ驚き方をする奴だ。君も警察官ならわかるだろう?犯人と決めるには証拠が必要なことを。君は普段の親父としてそれとなく来人を監視して貰いたい」
「私が息子の逮捕に協力???出来ません!、それは出来ません!。息子は殺人罪で死刑じゃないですか!そんな事をしたら私は息子を殺すことに協力することになる」
「法を犯すのか!きみは?」
「いえ、だから・・ここはひとつ何も聞かなかったことに・・」
「・・・・」
神崎は合格発表を見に行った。受験票を手に掲示板の数字を追う。
「ええええ!ない!俺の番号が無い!ウソだろ・・・」
周りはアホ面ばかり、隣では髭を生やしたおっさんが「えーと僕のナンバーは千・・二百・・七十・・シャン!」・・・・
コイツは3の付く数字はアホになる奴だ。
神崎は肩を落として歩いた。
「ああ、もう一年勉強かあ。・・・親父に大学諦めたって言ってみようか・・」
途中で桜舞い散る公園があった。ふらふらと公園のベンチに座り込んだ。
そこへ「散る桜もキレイなもんじゃないか!」
顔を上げると髭を生やしてポロシャツの衿を立て、セーターを肩に結んだ如何にもテレビ局のディレクターという風貌の男が立っていた。
「君の様子を見ると不合格かな?」
「ほっといてください」
「ほっとけないね、神崎君」
「何で俺の名前を・・」
「別名・・オナ。・・・当りかな?」
「知りませんよ。オナなんて」
「俺はオクラテレビのディレクターで5時のニュースを担当している。君はオナニー死の事件を知っているよね」
「ぼ、僕は受験勉強でテレビもニュースも見てないし・・」
「ほう、受験一本の男が馬券買って、ゲームセンターで遊んで・・ええ?それでもそういいきるか?」
「貴方に関係ないでしょ!」
「この先は黙って聞け!俺はオナを追っていた。ボンクラ警察のやり方じゃオナは捕まらない。こう判断した俺はありとあらゆる手を使って追い詰めた、君をナ。」
「僕はオナなんかじゃない!」
「そうリキむな・・俺はオナを警察に売ったりしない。いやむしろ応援しているんだ。君の次の処刑をニュースにしたくて待ってるんだ。うちの局で公開インタビューに出ないか?勿論顔は隠す。俺達は取材源の秘匿権がある。君を応援している人は日本中に沢山いるんだ。・・・どうだ視聴率1㌫に10万円払おう。君はあほやま大学を不合格になった。視聴率30㌫取れれば局から300万だ。アソコは落ちた学生全員に補欠入学と称して寄付金を要求してくる。払えば合格さ。40㌫取れば100万のお釣が来る。考えてみてくれ」
「貴方はなんでそこまで詳しいんですか?」
「あはは。俺もアホヤマの卒業さ、しかも、ほ・け・つ」
「オナに会ったら伝えときますよ」
「そうこなきゃ。これ名刺。心が決まったら電話くれ」
名刺には小倉と名前があった。
「どうだったの。受かった?」
「ああ、なんとかね」
「あああーよかった。後はお父さんが あほやま で許してくださるかどうかだね」
「関係ねーよ、そんなこと」
「あ、お父さん警察に泊り込みだから、下着を持っていってあげて!警察から電話がきたんだよ。息子さんに持たしてくださいって。ついでに受かったって教えてあげなよ」
「親父あれから毎日泊り込みか?」
「ええ、なんか大捕り物らしいよ」
「古いな、お袋も」
「あ、お前、お父ちゃん、お母ちゃんって呼ばなくなった・・」
「もう大学生だからな」
警察は神崎巡査に任せられないと判断し、かつ軟禁することにした。
泊り込みでファイルの整理に当たらせた。
ごま塩の髭面になり髪の毛はボサボサで関が原の西軍の落ち武者のようだ。
「あのう、神崎の息子です。父に下着をとどけに・・」
「2階の奥の部屋です」
神崎は警察が勝負に出たと感じた。
ここは逃げたら負けだ。
顔を見られても犯人と断定できない。断定する証拠は何も無いのだ。ノートを押さえられても俺は名前を書いただけ。気にするな、気にするな。余計なことを言わない、それに注意しておけば大丈夫!
「神崎です」ノックして部屋に入る。
「親父ぃ。下着」
「ひゃっ!あわわわ・・」
「どうしたんだよ?俺だよ」
「ああ、あうあう、そこに置いてくれ」
神崎巡査は息子に近づくのが恐いのか、紙袋にさえ触れようとしなかった。
「ご苦労さん。ライト君、どうだ、飯でも一緒に食わんか?警察の飯と言ってもおなじみのカツ丼だが・・それとも臭い飯のほうがいいかな?ん」狼がキツネを見る目だ。
「リュウザキ管理官!まあ、変な冗談に言わないで。あはは。ご苦労様。お父さんは泊り込みで頑張っていただいてるわ。奥様にもそう報告してあげてね。座ったら?いまカツ丼取って上げるから・・ね」
小池が必死でとりなす。
「ええ、でもまだ学校へ報告に行かなきゃ・・それに」
「それに?」警察の4人の声がそろった。
「ぼくの名前はライトじゃありません!・・・クルトです」
全員がコケた。
つづく