その日はとうとう学校を休んでしまった。
夕方家に戻りTVを観ているとニュース番組で特番をやっていた。
4件の怪死事件について病気の原因、捜査状況の説明など。
その後特別記者会見があってICPO(国際刑事警察機構会議)より全世界同時特別生中継が行われた。
「私は全世界の警察を動かすことの出来る男。通称エムです。またはエス。またはピー、またはエックス。犯人は名前と顔がわかると殺人の対象にすることが出来ると仮定して名前を伏せて居る訳です。つまり本名は明かさない。さあ、私と勝負しよう。犯人はおおよその目星がついている。どうだ?デスノートみたいにキラでもケラでも君も名乗ったらどうかな。きっと自信家の君のことだ。絶対捕まらないと信じているんだ。その鼻を必ずへし折ってやる」
「くそ!エムでもエスでも勝手に名乗れ!とうとうデスノートの展開になってきたな。あははは。デスノートと違うのは俺はどう頑張っても東大には行けないことかな。まあ、いいさ。向こうがその気なら俺もその気になろう。これからオナとでも名乗ってやるか」
翌日新聞を切り貼りして手紙を作り上げた。
「俺の名はオナ。俺は女性の敵をマスターベーション死させること、それが使命だ。エムかエスか知らないがお前がせんずり死しないように気をつけろ」
東京駅に行き新幹線の車両の中においてきた。
シートの背もたれの部分に見えないように突っ込んできたのだ。
いつかは見つかるだろうが、時間は稼げるだろうし、場所の限定も時間がかかると考えたのだ。
俺はキラと違い、頭が悪いので遣り方もアナログで行こうと心に誓ったのさ。
何日かして2回目の特別記者会見が行われTVで生放送が行われた。
「犯人からオナと名乗りを上げた手紙が来た。オナ、今ココで俺を殺してみろ。俺をこの場でマス死させてみろ。気が付いたろうが先日の記者会見を開いた男と顔が違う。今しべっている俺も別人だ!うふふ。そう簡単に俺は殺せないぜ。くあ、う、う、う」
テレビの前の男は苦しみ出しテレビカメラの前でパンツを脱ぎ始めた。
あれ?俺以外にもノートを持っている奴がいる?でも・・・
「うはは。今のは芝居だよ。俺はオカマだ。ちんは切り取ってあるんだ。吃驚したか?悔しいか?さあ、かかって来い
これは蓑田刑事の一人芝居だった。
蓑田刑事はデスノートの愛読者であり、初期の頃からノートの存在を気にしてデスノートのストーリーにしたがってみたのだ。
「何が世界の警察だ。あからさまな挑発をして次の犯罪を誘ってやがる。つまりは手詰まりになってるってテレビで告白してるんじゃねえか!この勝負俺の勝ちだな」
毎晩高木からメールが来て「大丈夫?」と心配してくる。
その後も高木は警察に呼ばれ事情を聞かれたが手紙は痴漢に合い怒りに狂って書いた手紙で犯罪とは関係ないと主張し続けた。
それで警察も捜査に行き詰まった。
俺が動きを止めた為に手がかりを待っているらしい。
警察が取った手は高木を使ってウソの情報を流し続けたのだ。
「警察は犯人の目星がついている。○月○日に家宅捜査に入る」などと高木が慌てて動くのを待ったのだ。
しかし高木も俺もセンター試験に集中した為に派手な動きはとらなかった。
高木も俺に対して恐れを持っているらしく恋人発言もどっかに吹き飛んだようだ。テレビも観ないでテスト勉強に集中したのが功を奏した訳だ。
警察は伝染病説を否定したと発表した。三浦の精液を浴びた誰一人発病しなかったし、血液検査も異常なく、採取した精液からも得意なDNAの配列も発見されない。
捜査の進展が何もないと無能と笑われる。
それを恐れたのだろう。
その間面白い通報が2件ほどあったみたいだ。
勉強していると思った息子がエロ雑誌を見てオナニーをしているのを見つけた母親が病気にかかったとひとり合点して警察に電話したのだ
まさか自分の息子が・・あんなことを我が子のオナニーシーンを盗み見て動転した母親は父親に相談する前に110番してしまった。
息子はなすすべを知らず病気を装いオナニーし続けた。
警官が勉強部屋に入ってみると、オナニー疲れかチンポコはしおれ荒い息を繰り返していた。
警官2人に見られ萎むのも早かった。
もうひとつはラブホテルで彼女に対しいかに自分の精力があるかを見せようとオナニー合戦をした男女があまりにも男性がオナニーし続けたため警察に連絡。
男もそれが自分の自慢になると考えて手を止めなかったらしい。
でも8回続けてオナニーしたところで立たなくなった。慌てて女が間違いだったと電話して警察は出動しなかった。女はニュースになるのを恐れて男を残してラブホテルからいなくなったというお粗末な事件だった。
マスノートの威力はそんなものじゃない。
実際に目にした者は解るが、平均すると30~40発は抜き続ける。
その間決して萎れたり、精子が出なかったりしない。例え透明な体液だけになっても掻き続ける。目は赤く充血し、チンポは赤剥けし、力のある男が腕を押さえ込んでも腕の動きは止めることが出来ないのだ。
センター試験は高木はそこそこの目標値を獲得でき、神崎は来人の予想通りE判定、C判定が並んだ。母親は警察のせいで集中出来なかったと思い込み、父親は無言でタバコをふかし続けた。
来人は「俺には特別な力があるんだ。東大が何だ!大学が何だ!」気にもかけなかった。
センター試験が終わり遠ざかっていたパソコンを開いてみるとオナの2ちゃんネルが出来ていたり、オナをたたえるHPが出来てたりとデスノートの実際版を楽しむといった社会現象が起きている。
来人は正直嬉しかった。
やはり俺の力を頼みにしてる人が全国には沢山居るんだ。
HPには処刑希望コーナーという書き込み欄があり、自分が痴漢被害にあってその痴漢を処刑して欲しいとか、DVで今の夫は処刑に値するなどオナに頼みたいなどの書き込みがしてある。
思い切ってここらで自分と全く接点のない地方の見も知らぬ女性の敵を殺してみようと考えた。
そうしないと警察は高木を追い続けるだろう。
高木から警察の意識を離れさすにはそれが最善の方法。
その方法とは俺が現場に居なかったという事を証明してくれることが大事、そのときに処刑する。
ノートに日時を指定して・・。
顔を知る方法を考えなければ。
HPに書き込んで「そんな非道な奴の顔を見てみたい」とか言って写真をアップさせよう。
神崎はベッドに入って最初から計画にミスがないか、ほころびがないか考えシュミレーションを何度も繰り返した。朝方眠りについた。
高木には何も知らせないこと。
高木には別のノートも持っている影の存在を見せかけること。
パソコンはインターネット喫茶の物からアクセスすること。
自分が現場に居なかったことの証明は公的機関、例えば区役所などを利用すること(警察などはワザとらしく却ってよくない)
ノートは小さく切り取って使用し警察にノートを抑えられても誰を書いたかなどの証拠を残さないこと。
などなど。
その日インターネット喫茶でHPをよく見て何件かの書き込みに対してターゲットを絞り込む。
その結果4人に対し婦女暴行を犯し、証拠不十分で不起訴になった相手への怒りをぶちまけた書き込みがあった。
コイツだ。
その後新聞社のホームページにアクセスしてニュース記事を確認した。
裁判の経過について不起訴になった理由も読んだ。
被害者の女性が告訴を取り下げた。
商人拒否したらしい。
岐阜の事件。
俺と岐阜・・・つながりは何もない。
処刑日を何時にするか・・・俺が区役所に行く必要性・・・1時間ほども区役所にいる理由、目的。
ココが一番難しい・・ICPOと警察はノート存在を知っている・そこまでする意味がないのか。
また出来れば被害にあった女性達に処刑の現場を、実行犯がどうなるかを見せてあげたいという別のことも考えた。
まだ時間をかけたほうがよい。
焦ることはないのだ。
処刑日は別にして岐阜の被害者の女性が本気でオナに対し処刑を望んでいるか、犯人の顔写真を送ってくれるかなどは先に確認しておこう。
翌日インターネット喫茶に行きHPに書き込みをした。
「私もオナの処刑に共感を持つ者の一人です。性犯罪者が裁判で実刑を受けても再度同一の犯罪を犯すケースが多いと聞きます。実は私はオナの正体を知っているのです。貴女が心から処刑を願っているなら私がオナに伝えてあげましょう。またここのサイトに書き込みをください。 オナの信奉者 オナペットより」
その日は書き込みがなかった。
最初の書き込みが一月も前なので毎日サイトを見ていないことも考えられる。
自分のパソコンからの書き込みは要注意だが、見るだけなら自分のパソコンで見ての返事を待てばいいだろう。
家に戻ると高木から連絡が入った。
警察が再度事情聴取させて欲しいと連絡が入ったというのだ。
コレまではセンター試験に集中したいと断っていたのだと言う。
「すると本格的調査はこれからだというのだな。絶対に俺の存在は明かすな!俺も高木から警察の目をそらさせることを考えてみる」
「私は絶対にばれない様にするから安心して、今日はそれを言いたかったの」
「おい、高木。お前ボーイフレンドはいないのか」
「神崎君だけに決まってるじゃない」
「俺に気を遣うな。塾とか予備校とかに手紙をくれるような男はいないか思い出してみろ」
「そりゃいないこともないけど・・」
「そうか。高木、俺以外にボーイフレンドを作れ!これは警察の目を誤魔化す作戦と理解しろ。警察はしばらくその男の周辺を調べるだろう。いくらかでも時間が稼げる」
「ええ、わかったわ。当てがないこともないから」
高木は何通か手紙を貰った中から気になっていた予備校の男に手紙を書いた。
「センター試験が終わるまで返事できなくてごめんなさい。出来れば今度の土曜日デートしませんか?あたしから誘うのも恥ずかしいけど勇気を出して手紙書いています・・・」
翌々日に速達が来た。
彼の携帯のメールアドレスと電話番号が書いてあった。
「嬉しいです。小枝子ちゃんから手紙貰えると思ってなかったので吃驚です。土曜日楽しみにしてます。連絡は携帯のメアドとNO載せておきますので急ぎの時はそちらへお願いします」
「とりあえず、今度の土曜日デートの約束をしたわ」と高木からの電話。
「よし、それでいいだろう。相手は?」
「相模明人。予備校の人。一浪で医者になりたいって国立の医学部に入りたいらしいわ」
「後は高木に任せる。本気で好きになってもかまわないぜ」
「そんなこと言うと怒るわよ。あたしは神崎君の恋人でしょ!」
「そう怒るな。俺はしばらく会わないほうがいいから、そう思っただけだ。デートの様子は毎日連絡してくれ。あと彼氏の身の周りの変化も聞けたら聞いて教えてくれ。警察が必ず動き出すから・・」
「わかった、じゃね」
つづく