翌日学校では岩槻が鬼頭と同じにマスの掻き死にをしたらしいとの噂でもちきりだった。
喫茶ハーレーで暴走族のリーダーの女を見ていきなりせんずり掻き出したらしい。
マスターはハーレーと店名に付けるくらいの暴走族上がりの男である。
無論店は暴走族のたまり場になっていた。
女は最初は笑って見ていたらしいが、液がかかったとかで切れて族の総長に電話を入れたらしい。
岩槻は族に囲まれてもせんずりを止めなかった。
「んざけんな!この、がきゃ!」
族は下半身裸の岩槻を表に引っ張り出すとぼこぼこにした。
それでも岩槻は手を動かし続けた。
「もう、いいよ。こんな変態」
女のひと声でそれぞれバイクにまたがり、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
マスターが救急車を呼び病院搬送された。
血だらけの顔で治療を受けながらもせんずりを止めない。
看護婦達は最初は面白半分、興味半分見ていたが最後はあきれて個室に押し込んで、誰も担当するものがなく夜中に当直がそっと覗くと死んでいた。
ベッドの周りは白い液が飛び散り頬はこけ、目は真っ赤、涎を垂れ流し、病名は脳溢血として診断され処理されたらしい。
ただ病院は入院して脳溢血として片付けても警察はそうは行かなかった。
暴力事件後の怪死である。
血液検査をし、遺体を解剖に回した。
実は警察は鬼頭の怪死も掴んでおり、校長や山本女史なども事情を聞かれたようだ。
二人の共通点がいくつか上げられて、不良仲間の脅迫、覚せい剤説、最後には新しい伝染病説なども取り沙汰された。
しかし、直接的な原因はわからずお蔵入の状態である。
来人はいきなり身近な人間を二人も処刑したのはまずいと反省し、ノートの使用を控えるようにした。
しかし警察の取調べは学友にも及んだ。
「そうか、身近じゃない奴を殺せばいいんだ!」
ニュースで見た酔っ払い運転で小学生をひき殺した記事を思い出し、名前を書き込んだ。顔はパトカーに乗せられるふてぶてしい姿をカメラが捉え何回もテレビで流れた居たのですぐに頭に思い浮かべることが出来た。
その日の夜、ニュース速報が酒酔運転容疑で拘留中の男が死亡したと流れた。
翌日の新聞は一面でこの事件を取り上げ東京の高校生の怪死と似ているとつけ加えた。
ただ病名は心臓疾患とされ詳しいことは伏せられている。
TVや新聞記者、週刊誌の記者などが学校にまで押しかけ校長や担任や学校の対処の仕方をまずかったのではないですか?そこのところをどう考えますか?詰め寄った。
じきにますの掻きすぎで死んだという噂が流れて、奇異なニュースとしておさまりが付かなくなった。
ただ、3人目の怪死が東京から離れていること、被害者は拘留中であったことなどからますます伝染病説が浮上してきた。
ピンポ~ン「神崎さん、ちょっとインタビューお願いします。息子さんにいらっしゃいませんか」
「その件は息子も落ち込んでますのでそっと・・」母が応対した。
俺が顔をだすと「あ、来人さん?何故鬼頭君は死んだと思いますか?あなたは鬼頭君にいじめられていたとか?体育館でその行為に及んでいるのを見ましたか?どんな様子でした?」
「鬼頭は天罰が下ったのだと思います」
「あなたは鬼頭君を憎んでいましたか?殺意を感じたことは?」
そこへ非番の親父が帰ってきて「しつこいと警察を呼ぶぞ!」
「あ、お父さん、お父さんがが警察でしょ!」
「ああ、そうか」
新聞記者たちは父が警察官だとわかると「今日はありがとう。また来ますので宜しく!」と帰って行った。
「受験前は勉強に集中してくれ。記者の方はお父さん、お母さんに任せて」
いいチャンスだ。「ああ、受験前にクラスメイトが死ぬなんて・・集中なんて無理だ」
「気持ちは判る。でもな、ここで失敗するともう一年丸まる勉強だぞ」
それも嫌だ。勉強部屋に戻ってベッドに倒れこんだ。デスノートを参考にするとマスノートは性犯罪者を裁くべきなのかも知れない。女の敵を裁いていけばやがて日本は平和になるだろう。俺はヒーローになり、ミサミサみたいな女の子が彼女になってくれるかも知れない。待てよ、俺も名前を考えなきゃ。キラに対抗して・・・オナ。Lも現れるかも・・・なんて名乗るか、それは向こうが考えることさ。その晩は眠りにつくと朝まで目が開かなかった。久々にオナニーしなかった記念の日。翌日学校へ遅刻してしまった。どうせ遅刻は遅刻、ゆっくり学校へ向かっていると高木小枝子に会った。小枝子は泣いていた。
「おはよ。なんだ泣いてるのか?何があった?」
「ううん、何でも無い」
「何でも無くて泣くやつはいない。何があった?」
「朝、最近電車で痴漢されるの」
「ち、痴漢!」
「恐くて黙っていたらだんだん調子に乗ってきて今日はスカートの中に手を入れてきて・・」
「うちの制服目立つし、高木は身長高くて可愛いから狙われ易いんだな」
「嬉しい。そんなこと言ってくれるの神崎君だけよ」
「よし、俺が退治してやるよ。その痴漢」
「え、良いの?最近神崎君人が変わったみたい。鬼頭君が死んでから・・・」
「そ、そうかな。女性の敵は許せない」
「なんか神崎君、頼もしいわ」
「高木、朝何時の電車に乗るンだ?俺も明日その電車に乗って凝らしめてやる」
「朝7時に新宿に着くの。その電車の明大前辺りから乗ってくるサラリーマンみたい」
「よし、今晩電話する。打ち合わせしよう」
夜に高木に電話して車両のどの辺りに乗るか、など打ち合わせをして俺も明大前から乗ることを伝えた。
翌朝は早くに起きてわざわざ明大前まで出かけて電車を待った。
2,3台見送って電車の窓に張り付くように立っていた高木が小さく手を振った。
ドアが開き乗り込む。
乗り換えの乗客が多いので誰が痴漢野郎かわからない。
話かけないことを夕べのうちに約束しておいたので高木も俺も他人のように見知らぬ顔をしていた。
高木との距離は約1m。
高木が痴漢行為を受けたら、結ってある髪を解いて合図を送る。
俺は高木の後ろに立っている男性の顔を見る。
あとは何とかして痴漢の名前を知ればよい。
高木はうつむいて歯を食いしばっている。
現れたか?少し高木のほうへ近づいてみる。
高木の後ろには3人の男性が立っていた。少し強引に人を押し分け高木の斜め後ろへ立った。
一人の男性は網棚のかばんを取ると離れて行った。高木が髪を解いて右後ろの男性を気にしている。
そうか、あいつか。
俺は高木に近づいて「おはよう、いつもこの電車?」と大きな声を掛けた。
邪魔が入ったと思ったのかスーツの男性はきょろきょろしながら移動していく。
「今の男だな」
「いやらしいったらありゃしない。お願い、悔しいわ」
「任せろ。俺はあの男をつけて行くから学校へは適当に言い訳しておいてくれ」
電車が新宿に着いた。
男のあとに付いて電車を降りる。改札を抜け男は早足でコンコースを歩いていく。
俺は駆け足で追う。
「えーい、らちがあかねえ!ぶつかってみるか」・・・「あっ高木さん!こないだはどうも!」「?」
「高木さんでしたよね。こないだは危ないトコ助けていただいてありがとうございました」「君、人違いじゃないのか」
「またまた~。こないだ電車の中で僕と彼女が絡まれたときに助けていただいた・・・高木さん!」
「僕は三浦というもんだが・・」
「あれ、人違いかな。三浦さんとおっしゃるんですか?高木さんによくにているけど・・・」「失礼、僕は急ぐんで」男は行ってしまった
俺は方向転換して学校に急いだ。
お昼休み、高木が寄ってきて「今日はありがとう。神崎君が居なかったらまたひどい目にあってた。今日は大したことされなかったわ、助かった」
「高木、屋上に行こう」
「あ、ええ、いいわ」・・・屋上で待っていると高木がしばらく間をおいてついてきた。
「今日が最後だ。明日処刑してやる」
「処刑ってどうするの?」
「それは秘密だ。明後日以降あの男はあの電車に乗ることは無いだろうさ」
「ふーン。え、明日は乗るの?」
「明日は高木から最後の引導を渡してやれよ」
「何をするの?」
「思いっきり文句を言って・・・あ、言えないか。・・そうだな、こうしよう。地獄に落ちろとでも書いた手紙を渡してやれよ」
「何であたしが手紙なんか・・」
「いいんだよ。悔しかった事を手紙に書いて渡せば、少なくともその日は何もしてこないだろう。そうだな、可愛いピンクの封筒に呪いの手紙を書いて、あとで読んで!とかなんか行って渡して逃げろ。そのほうが痴漢されないだろう」
「本当にそれ以降は同じ電車に乗ることは無いのね」
「ああ、あいつは会社も首になる」
「え、首に?」
「それ以上は聞かないでくれ。間違いなく処刑するから」「ええ、わかった。やってみるわ、アン畜生」
俺はその晩マスノートに「三浦、会社に出勤。AM8時に給湯室でマスのかきすぎで死ぬ」と書き込んだ。
あとは確認の使用が無いのでいつも通り学校へ行った。
高木は俺を見つけるとおかしそうな顔をして近づいてきた。
「さっき呪いの手紙渡してやったわ」
「そうか、今日は痴漢被害には合わなかったか?」
「ええ、触られる前に手紙渡して電車降りたの、一台遅らせたけどお尻触られるよりいいもん」
「どんな顔してた?」
「吃驚してたわ。おずおずと受け取って。あたしサッと降りてホームから電車の中見たらあいつニヤニヤしてバッカみたい」
「よし、それでいい。たぶんあいつは明日から電車に乗らないはずだ。一応明日は俺が明大前から一緒に乗るよ、念の為」
「わー、そこまでしてもらうの悪いわ」
「手紙を渡して怒らせるとまずいし、99㌫乗って来ないと思うけど・・・」
「ね、神崎君て彼女いるの?」
「いねえよ。そんなもん」
「今度、デートに誘ってもいい?神崎君、好きになっちゃった」
やった!しかしそこはクールに「ああ、もしなんなら明日学校サボって映画でも行くか?」
「うふふ。面白いわね。決まり。明日新宿で映画見よ」
つづく