牛乳配達の青年が新規の客を開拓しようとマンションを虱潰しに訪問して回っていた。
半分くらいは留守、半分の半分は既に利用してもらっている。
一軒のドアのチャイムを押した。
「ピンポーン」
いきなりドアが開いて「誰だ!」
まさしくヤのつくお兄さん。
「いえ、あ、あのー牛乳を・・・」
「何!牛乳?」
「やっぱり要りませんよね。・・・はは、失礼しました」脱兎のごとく逃げ出すようにドアを閉めた。
「おい、待ちやがれ」
腹に響くようなドスの聞いた声に思わず立ち止まる。
「お前ぇ、若いのに度胸あるじゃねぇか。面白い。明日からコレだけ届けろ」
と、片手を広げて見せた。なんと小指が半分しかない。本物だ。
「うちには若いもんがゴロゴロいるからな。どうだ、いい商売になったろ!がはは」
「ありがとうございます。じゃ、あの、これ・・」
「なんだ!なんかくれるのか?」
「この箱に入れるようにしますのでこれ、ドアの前に置かせさてもらっていいですか」
「何でぇ。牛乳箱か、勝手に置いてけ」
本当は印鑑かサインが必要だが、怖くてそれ以上言えなかった。
集金は集金係りがやるだろう。
・・・・翌日、組の若いもんが牛乳箱の蓋を開けてみると
牛乳4本とヤクルトが1本入っていたとさ。・・・そのあとは知らない。