好きな人を前にした瞬間。
頭が、真っ白になる。
家で完璧に用意したはずの言葉が
きれいさっぱり飛んでいく。
そんなこと、ありませんか。
言いたかったことは山ほどある。
なのに口から出るのは
「あ、うん」くらい。
で、別れたあとに思い出す。
「あれも言えばよかった」って。
枕に顔をうずめて
ひとり反省会がはじまる。
なんであんなに
うまく話せないんだろうって。
でも、あの真っ白。
実はあなたのせいじゃないんです。
きょうは、その正体を話します。
あがり症でも、口下手でもない。
ちゃんと、脳の理由があるんです。
落ち着いて話せるコツも
最後にふたつ置いておきます。
近年の研究で
おもしろいことが分かってきました。
ガイスラーという
ドイツの研究者がいます。
その人は、人にストレスをかけて
脳のはたらきを測ったんです。
わざと緊張する場面を作って
そのとき頭の中で何が起きるか
のぞいてみたんですね。
使ったのは
頭の表面の血の動きを見る装置。
分かったのは、こういうこと。
強いストレスがかかると
「考える脳」が、すっと弱る。
考える脳っていうのは
おでこのあたりにある部分。
段取りや言葉を組み立てる係です。
そこが、ストレスで一時的に
オフラインになってしまう。
かわりに前へ出てくるのが
「本能の脳」のほう。
危険にぱっと反応する、古い部分。
グオたちの実験でも
おなじでした。
強いストレスがかかると
まっさきに落ちるのが
言葉を扱う力だったんです。
たとえるなら、こんな感じ。
火事が起きた建物で
のんびり会議はできませんよね。
脳も、まったくおなじ。
「緊張」という警報が鳴ると
ゆっくり言葉を選ぶ作業は
あとまわしにされる。
命を守るほうが、先だから。
要するに、こういうことです。
好きな人の前は
うれしいけど、ものすごい緊張。
脳にとっては、それも
立派なストレスなんです。
だから、考える脳がオフになって
用意してた言葉が
どこかへ飛んでいく。
あなたが緊張に弱いからじゃない。
脳が、ちゃんと反応してるだけ。
思い出してみてください。
家に帰って、お風呂の中で
「こう言えばよかった」が
いくらでも浮かんでくる。
あれ、ありますよね。
あれこそ、警報がやんで
考える脳が戻ってきた証拠。
その場で言えなかったのは
あなたの実力じゃないんです。
ただ、脳がお休み中だっただけ。
これ、わかると
ちょっと楽になりませんか。
頭が真っ白になっても
こう思えばいい。
「考える脳が、お休み中」
それだけで
自分を責めなくて、よくなる。
しかも、です。
ロークたちの研究チームが
こんな実験をしています。
前もって脳をならしておくと
おなじストレスでも
言葉が飛びにくくなった。
つまり、この真っ白は
ちょっとの工夫で、減らせるんです。
じゃあ、どうするか。
きょうからできることを
ふたつだけ。
ひとつめ。
完璧に話そうとするのを、やめる。
ぜんぶ覚えていこうとすると
考える脳がパンクしやすい。
だから、伝えたいことは
キーワードを三つだけ決めておく。
脳のメモ帳に、すきまを作る。
それだけで、飛びにくくなります。
ぜんぶ伝えなきゃ、と思うほど
よけいに飛びます。
三つでいい。いえ
ひとつでも、いいくらい。
ふたつめ。
もし真っ白になったら
かくさずに言ってみる。
「ごめん、いま緊張してて」
かくそうとするほど
ストレスは上がって
脳はもっと固まります。
正直にバラすと、ふっと力が抜けて
考える脳が、すっと戻ってくる。
それに、緊張してるって
つたわって悪いことですか。
それだけ本気なんだって
ちゃんと、伝わります。
頭が真っ白になるのは
あなたが弱いからじゃない。
それだけ、その人が
大切だっていう証拠です。
脳がびっくりするくらい
あなたは本気なんです。
その本気は、けっして
かっこ悪いものじゃない。
むしろ、いちばん素敵な部分。
うまく話せた日も
しどろもどろの日も
どっちのあなたも、いいんです。
次に真っ白になったら
責めるかわりに
ちょっとだけ笑ってあげてください。