相手は中学生や高校生もいる。大きい奴も一人や二人じゃない。
「さて、行くか。敵は公園にあり、やな」
 どうしてそんなに落ち着いているのか分からないけど、とにかく僕は父ちゃんを信じることにした。
 公園の手前で父ちゃんは足を止め、ポケットからスマートフォンを取り出して植え込みに隠した。
「これでよし、と。おっ、もう啓太くん来てるな」
 ベンチに座っていた啓太が立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。
 昨日腫れてた右目は、完璧にふさがっている。
 父ちゃんは酷いなって一言だけ呟いて、啓太の頭を撫でた。
「啓太くんもよう頑張ったな。友達を巻き込みたくないからって、なかなか男前やないか。

御両親から何か訊かれた? 」
「いえ。ママは実家に帰ってるし、パパは昨日も遅かったから顔あわせてないんです。

そんなことより、大丈夫ですか? やつら、結構デカいですよ」
「大丈夫や、父ちゃん空手やってたし」
「すげぇっ! 何段ですか」
 父ちゃんは大げさに胸を張った。
「ふっふっふ。聞いて驚くな。一級や」
「一級? 」
「段持ちは黒帯やけどな、父ちゃんは茶帯やった」
 ふくれあがっていた不安が爆発しそうになってきた。
「茶帯って強いの? 」
「どうかな。やってみな分からんなぁ」
 啓太が不安そうに僕を見る。僕も同じような顔で見つめ返すしか無い。


「お。来よった来よった。アホがようさん来よったで」
 馬鹿笑いしながらこっちに歩いてきた奴らは、父ちゃんを見て立ち止まった。
「おっさん、なんや。こいつらの親か」
「ぴんぽん」
「何がピンポンじゃ。で? なんやの? 俺らに注意でもしよってか」
「子供のケンカに親が出てきてどないすんの」
 口々に罵るのを黙って聞いていた父ちゃんは、しばらくして低く静かな声で答えた。
「おまえらのは子供のケンカやない。子供が狂犬に咬まれそうな時に守るのが親や」
「おもろいのう。俺らとやる気か」
「てっちゃん、やったれ。んなおっさん一撃や」
「任せとき。いくでっ! 」
 ごっ。
 父ちゃんは何故か身動きもせず、顎にパンチを受けた。
「ふむふむ。これがおまえの一撃かいな」
 すげぇ。全然効いてない!
「あ痛たたた。めっちゃ痛いやん」
 なんだそりゃ。こ、これはもしかしたらダメかもな。