熊は気を利かせたつもりだったが、かえって逆効果だった。
焦りまくったあふろ君は椅子につまづいて、前のめりにベタッと
倒れ込んでしまったのだ。

「だいじょうぶ?」

「あ、へ、平気っす」

「でも鼻血…」

「あ、赤い鼻水っすよ。へへ、さぁ貼りましょ」

つくね亭には掲示板がある。劇団員や、ミュージシャンが多い為である。
公演のチラシやライブの情報、最近では『人生の伴侶募集中』
などというビラも貼ってある。
近所の主婦同士の連絡メモがわりにもなっている。
あふろはチラシをそのド真ん中に貼った。

「これでよし。あの、これって俺みたいなのが見に行っても良いですか?」

「もちろんです!嬉しいです。じゃ、熊さんまた来ます」

「あぁ、良かったらチケットも持ってきたらいいからね。
多分、完売させてくれる子がいるから」
熊はあふろ君をチラっと見た。
うんうんと激しくうなづいている。
せっかく止まった鼻血がまた出てきた。

「ほんとですか。ありがとうございます!」
踊るように出て行くななちゃんをあふろ君が
鼻血を垂らしながら見ていた。

六へ