若い頃のバカ話を
もう一つ。

例によってほろ酔い
の俺は仲間と別れて
いい気分で駅に
向かっていた。

近道をしようと
裏通りに入って
すぐだった。

向うから、ボディコン
のお姉ちゃんが
全速力で走ってきた。

その後ろから、5~6
人の男達が追いかけて
くる。

何だろう、と考える
前に俺は体が動いて
いた。

お姉ちゃんを背中に
隠し、男達と向かい
あった。


「おお、兄ちゃん、
かっこええなぁ。
けど怪我したく
なかったらさっさと
寄越さんかいや。」

俺はその男を無視して
お姉ちゃんにだけ
聞こえるように言った。

「今からあいつの
鼻に頭突き入れる。
それを合図に逃げぇ。」

ふらふらと近づき、
油断している男の
鼻に急角度で頭突きを
入れた。
へにゃへにゃ~と
崩れる男の襟首を
掴んで振り回し、
残りの男達にぶつけた。

慌てる男達を尻目に
お姉ちゃんの後を
追う。

「こっちや。この
中なら見つからん。」

俺はよく行くライブ
ハウスの楽屋口から
中に逃げ込んだ。

ようやく一息ついて、
お姉ちゃんを間近で
見た。

めっちゃ別嬪さん。

真中瞳によく似てた。

これはラッキーかも。


「大丈夫やったか。
怖くなかったか?」

「おおきに。兄ちゃん
強いねんな。うち、
惚れてしまいそうや。」


その声は、大変に
野太い男の声だった。

ニューハーフの手を
ひいて走り抜けた
梅田。
我が青春の街。
とほほ。