利恵は、僕が言うのも何だが、素敵な女性だ。
報道カメラマンを目指すフリーターの僕とは違い、毎日バリバリと働く看護師なのだ。
彼女が働く病院を撮影に行った時に知り合った。それ程美人でもない、どちらかと言えば愉快な顔なんだが、僕は一目惚れというのが本当にあるんだと知った。

何度も撮影に通っているうち、心も通い合う。
付き合ってみると、余計に彼女の魅力の虜になった。

どんな時でも明るく微笑んでいる。
その笑顔だけで、病気の何割かは吹き飛んでしまいそうだ。

なかなか将来が見えて来ない僕の、凹んだ気持ちも吹き飛ばしてくれる。
僕達は恋人であり、戦友であり、互いの栄養剤だ。

喧嘩なんかしたことも無かったのだが、今日初めて意見が食い違った。

きっかけは一枚の写真だ。

それは、1994年のピューリッツァー賞を獲得したケビン・カーター氏の写真。

『ハゲワシと少女』と題されたその写真を見て、利恵はポロポロと涙をこぼした。

飢餓と内乱の国・スーダンで撮影された写真だ。
緑が一片も見えない荒れ果てた土地を背景に、痩せ衰えた少女が力無くしゃがみ込んでいる。
その後ろにハゲワシが一羽。
少女が死ぬのを待っているのだ。