その日も暗い気持ちのまま、昼を迎えた。
昼の弁当を一緒に食べる相手も居ない。
この年頃のほとんどの少女達にとって、それはかなりの苦痛である。
早智子は、いつものように屋上へ向かった。
そこならば、他人の目を気にすることも無い。
晴れた日ならば心地よい風に吹かれながら、雨の日は落ちる雨粒を
数えながら一人きりでいられる。
長い長い一日の中で、唯一そこだけが気を抜ける時間だった。
遠くの山々を見ていると、鳥になって飛んでいけたらとも思う。
何か音楽があればもっと良いのだが、それだけは何ともしようがない。

だがその日は少し、勝手が違った。音楽が聞こえているのだ。
誰かが、トランジスタラジオでFM放送を聞いている。
不審に思いながら、いつもの給水塔の下に行く。
そこに、あの人がいた。
真っ直ぐな視線のあの人、秋山奈保美。
早智子は呼ぶことは無いだろうと思っていた名を唇に乗せた。
「秋山さん」

慌ててラジオに手を伸ばしながら振り向いた
奈保美は、早智子を見て安堵の表情を浮かべた。


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