松岡先生は一言で言い表すと、厳、の人である。
教職に就いて早二十年。
生徒の前は言うに及ばず、家庭においても滅多に
笑顔を見せる事は無かった。

理由がある。
元々が気弱な性格でありながら、松岡の外見は狛犬そのものである。
しかも大きく口を開けて睨みつけている方の狛犬だ。

幼い頃から、狛犬のあだ名は付いてまわった。
甚だしくは、教師もそのあだ名で松岡を呼んだ。

松岡もそれを是とした。
実際、毎朝鏡に写るのは狛犬なのだ。

早くに母親を亡くし、父と二人暮らしの身の上では
狛犬の方が何かと都合が良い場合が多い。
狛犬に似合うのは厳しい顔である。
松岡の人生は、あだ名によって決まったともいえる。


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