朝からカラッと晴れ上がった。

梅雨はまだあけてないのだろうか?
それにしても爽やかな夏空だ。

俺の故郷である福井県敦賀市は海が美しい。

昔から、少年と海は大の仲良しだ。
俺も夏休みになると、いつもの指定席に仲間達と急いだものだ。
松原の左端、キャンプ場と海水浴場の境目。


水中メガネとモリは必需品だ。
その二つを手にして海に入ると、すでに気分は海の男である。
もちろん、何が捕れるわけでもないのだが。

泳ぎ疲れて波打ち際に座り、遠くを行く貨物船をぼんやりと見ていた。

腹が減ったら海の家で焼きそばを買う。
今と違ってビールなど買わないから安上がりだ。

そうやって一日中過ごして海水パンツ(としか言えないような代物だ)だけで帰る。
家の風呂で、それを脱ぐと、やたらと砂が落ちて母に叱られた。

夏の思い出は、いつも海にあった。

花火大会で初恋の人の浴衣姿に胸をときめかせ、

他校の奴らと派手なケンカをし、

ふられた夜に仲間と酒を飲み明かし…

だが一番強烈な思い出は嫁はんがくれた。


彼女は、この海に来た時、俺と娘を残して遥か沖合にまでスイスイと泳いで行ったのである。

その姿はあっという間に点になった。

俺と娘は、ポカンと口を開けて見守るしか無かった。



母が亡くなってからもう何年も海に行っていない。


あの海はまだ、ちゃんと綺麗なままだろうか。

今度は、息子を連れて行こう。

水中メガネを付けさせて、静かな海中を見せよう。

砂浜で食べるかき氷がどれほど美味いか教えてあげよう。


そして、点になるまで泳いで行く嫁はんを見送るんだ。