次の日の昼休み。
また宏美がやってきた。
スーツのポケットがやたら膨らんでいる。
出てきたのは林檎だ。
よく入ったものだ、と感心する倫子の目の前で、
宏美は果物ナイフを取り出し、スルスルと林檎を剥き始めた。
鮮やかな手並みだ。

「母ちゃんがさ、競争すんのよあたしと。
どっちの向いた皮が長いか、ってさ」

「…勝ったの?」

「最初はボロ負け。小遣い減らしやがんの。ったく。
でもね、このところは連戦連勝よ。はい、出来た」

目の前に置かれた林檎はウサギさんになっていた。

「…ありがと」

次の日はドラ焼きが出てきた。
その次の日は、たね屋のバームクーヘン。

「ねぇ、宏美さん」

「あ?」

「どうやってそのポケットに入れてるの?
家を出る時から入ってるの?」

「んなわけ無いべさ。ま、いいじゃん。さ、仕事仕事」

完へ