連絡を受け、現場に
到着した盲導犬協会
の井上は、ラックを
見て息を呑んだ。

多分、あの前足は
折れている。
だのに、ラックは
必死で救急車の
後をついていこうと
していた。
同行した獣医の
麻酔により、ようやく
ラックは意識を
失った。

ラックが意識を取り
戻したのは、
盲導犬訓練所の檻
の中だった。
毎朝のトレーニングの
音で目が醒めたのだ。

「井上さん、ラックが
目を覚ましました。」

「今行く!」

井上は後輩に訓練
を頼み、ラックの檻に
向かった。

井上の顔を見て、
ラックは弱々しく
尻尾を振った。

「ラック、大変だった
な。あまり無理して
立つな。
しばらくギブスは
取れないんだ。」

それでもラックは
何とかして立とうと
した。

「立つな、ラック。
もう、お前のハーネス
を握る人は、居ない
んだ。」

井上の涙を見て、
何かを察したのか、
ラックは座り込んだ。

「おまえは賢いやつ
だからな。判るだろ。
これからは、老犬
ボランティアの人の
家でのんびり過ごせば
いいんだよ。」

ラックのハーネスは
片付けられ、その
代りに引き綱がつけ
られた。

ラックは盲導犬として
の役目を終える事に
なった。