目玉がクルリと回った。
舌がぺロリと出た。
「…アキコサマ」

「ジロー!あたしが判るのかい?」

「ハイ。ナツカシイ デンキショックノ オカゲデス。」

亜紀子は子どものように泣きじゃくりながら、昔のようにジローを叱りつけた。
「人聞きの悪い事を言うんじゃないよ。
この…バカロボット。
バカ…だよ。
こんな長くご主人様をほったらかしにして…。
錆だらけじゃないか。
本当に、手のかかる子だねぇ、
帰って磨いてあげるよ」

亜紀子と真一、そして亜紀子の主治医からの強い要望により、
ジローは戻れることになった。
賑やかな、そして幸せな日々がまた始まった。

けれど、亜紀子の体は予想以上に衰えていた。

「アキコサマ。ドコデスカ。オチャノ ジカンデスヨ。」
ジローは、どうやらまともに紅茶が淹れられるようになっていた。
亜紀子が大好きなウェッジウッドのティーセットを胸元に掲げ、
静々と向かっている。
亜紀子は、壁に向かって座っていた。
母の写真を見つめているようだ。