ブルーシートに囲まれた発見現場は、異様な臭いに満ちている。

神蹟黄泉比良坂伊賦夜伝説地と刻まれた石碑の下に、臭いの源が有った。シーツを被せられているが、遺体に間違いない。
それが、二つ有った。

「なんだ、仏さん二人か」

余計に手間取るなと、稗田の渋面が増した。
近くに居た巡査を捕まえる。

「なぁ、身元は?」

巡査は相手がスッポンの稗田と見て取るや、丁寧に状況を説明し出した。
「男の方は身元が割れてます。地元の高校教師でして、名前が…西川亮。自殺と思われます」

稗田はその名前に聞き覚えがあった。
「確か…何か凄い発見をした男じゃ無かったか」

巡査はメモを見る事無く、その問いに答えた。
「えぇ、嘘か本当か知りませんが、黄泉の国の入り口を見つけたとか」

黄泉の国の入り口。
そんなものが本当に在るんなら教えてくれ、稗田は小さく呟きながらシーツに近寄った。
乱暴にシーツを捲りあげた稗田は、有り得ないことだが呻き声をあげた。
西川は首を吊ったのであろう、頭部がどす黒く膨れ上がっている。
自殺に間違いない。
が、問題点が一つ。
西川の頭部から眼球が消えていたのだ。


眼球は意外な所から見つかった。
西川の右手が握りしめていた。
自らの手でくり抜いたものと思われた。

三へ