「この辺りの方ですか?」

「えぇ。故郷です」

「それは良かった。実はですね…」
男は、妖怪を訪ねて歩いている、という
私の話を興味深げに聞いていたが、
小豆洗いという言葉に激しく反応した。

「…小豆洗い、か。俺の親父だ」

「えっ?!あ…なたの?」
小豆洗いに子供が居たとは。
まぁ、考えてみれば一反木綿にも家族はいた。
不思議ではあるまい。

「そうですか、いやぁ、ついてたな。
やっぱり、あなたも何処かで小豆を洗ってるんですか?」

「馬鹿か、あんた。いつまでも小豆なんか洗って
られるかよ。俺は東京で成功したんだ。
今日はその報告に帰るのさ」

「へぇ。そうなんですか…そりゃすごい。
何をされてらっしゃるんですか」

「俺は相場師さ。小豆相場で俺の右に出る
者はいない。」
青年らしい自信に満ち溢れている。
だが、私は何となく胡散臭いものを感じていた。

所々に安っぽさが見え隠れする。
ふと気付くと、青年の金色の腕時計は、
『ROLAX』だ。
着ているスーツも膝がぬけている。
何か隠している事があるのだろう。
だが、そこまで聞く権利は私には無い。

汽車を降りる頃には、私は青年とすっかり
打ち解けていた。


三へ