朝が来た。
いよいよ鬼退治だ。
緊張して冷や汗が出る茜を韋駄天が舐めた。

「あ…ありがと。韋駄天」
ぺろぺろと舐め続ける。

「もういいって。わぁ。わかったってば」

げらげらと笑う太郎丸につられ、茜も笑った。
たちまち、不安な気持ちが吹っ飛ぶ。
「太郎丸、韋駄天、行こう!」

「おう。」

わん。

しばらく山を登ったところに平地が広がっている。
男達はそこに屯していた。
叢に隠れ、そっと覗き見る。

間違い無い。般若の面を傍らに置いていた。

茜が唇を噛みしめる。殺された父母のことを
思い出したのだろう。

「じゃあ、あれが邪鬼だな。」
太郎丸が見つめる先に邪鬼はいた。

巨大な体を黒い鎧で包み、悠然と酒を呑んでいる。
兜を外している為、その素顔が見てとれた。
薄い唇に酷薄な笑みを乗せ、吊りあがった目が
辺りを睥睨する。
まさに鬼、としか言い様の無い顔である。