4月も終わろうとしている。
時折、初夏の風も吹く。
この時期、俺は今でも、一人の素敵な女の子を思い出すことがある。

少し驚かせるかもしれないのだが、
俺には、左の頬から首筋にかけて赤い痣がある。

生まれた時、臍の緒が首に巻き付いていたせいだ。
だから痣ができたんだ。
子供の頃は本気でそう思っていた。

母は、あらゆる手段を講じて痣を取ろうとした。
最終的に、ドライアイスで低温火傷させ、皮膚を壊す方法にたどり着いた。

これは激痛を伴う。
まだ十歳の俺にとって、その治療は苦痛そのものでしか無かった。

けれど、夜の仕事を終え、一睡もせずに俺の手を引いて駅に向かう母を見ていると、何も言える筈がない。

汽車に乗り、遠くの街まで向かう。
母が睡眠を取れる唯一の場所だ。
起こさないように、じっとしている。
胸は、痛みに対する不安で張り裂けそうだ。

けれど治療の間、俺は絶対に悲鳴をあげないと決めていた。
そうすることで、母の想いに応えたつもりであった。

その病院は、当時では最先端の痣治療を行っており、県内の各地から患者が訪れていた。
いつの間にか俺達は、ある親子と顔馴染みになった。

みっちゃんという、髪の長い美しい少女。
マセたガキだった俺は、みっちゃんと話すのが楽しくて仕方なかった。