「あのねぇ、この近所のもんだけどね、ちょっといいかね」
樋口が恐る恐るドアを開けると、そこには幸一に話し掛けた中年の女性がいた。

「あら。お父さんがいらっしゃるの。ならいいのよ。ごめんなさいね、
いや、いつもその子達しか見かけないもんだからさ」

「え。あ、あぁそうなんですよ。仕事が忙しくて、こいつに
面倒をかけててね、いや、父親として恥ずかしいかぎりで」

あらまぁ大変ね、頑張ってねと言い残し、女性は立ち去った。

(そうか、こいつは助かるかも)
樋口は、こちらを見つめる子供達を利用する事に決めた。
「なぁ、お前ら。しばらく一緒に暮らすか。おじさん、しばらく
外出できないんだよ。買出しとかやってくれると助かるんだが」

「本当ですか?構わないんですか!」
幸一の瞳が輝く。彼らにとっても、大人の男性が一人居ることは、
何よりのカモフラージュになるのだ。

「あぁ、構わんよ。よろしくな、と言ってもあと
一ヶ月ぐらいだが。その間の飯は俺が買うから」

差し出した樋口の手に幸一の手が重なった。
こうして、奇妙な家族の生活が始まった。


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