「あら涼子ちゃん。久しぶり、ゴールデンウィーク?」

「ええ、しばらくこっちにいます」

この辺りは時間が止まっているのでは、と涼子は感慨に耽りながら、実家への道を辿った。
幼い頃遊んだ公園も、父に連れられて入った喫茶店も、

高校の帰りに立ち寄ったお好み焼き屋も何一つ変わっていない。


けれど涼子が帰るたび、父と母は、古い街並みは色が褪せるように少しずつ消えていくと言う。
それでも二人は嘆くでも哀しむわけでもなく、ただそんなものだと受け入れ、

日々を過ごしているようだ。
何よりも変わらないのはあの二人だなと涼子は微笑んだ。


「到着ーっ」
ただいまと声をかけたが、返事が無い。

父は二階の仏間にいた。畳一面にばら巻かれた写真を一枚一枚、丹念に調べている。

「ただいま」

「わぁ。びっくりさせんなよ涼ちゃん」

「何度も言ったよ、ただいまって。何してんの?」

「何をって、写真の整理だよ」
父は、また写真に没頭しながら答えた。
確かそれは、母が撮影した写真である。写真は、母の唯一の趣味だ。
下手の横好きと自嘲しながらも、一向にやめようとはしなかった。

長らく見ない間に、かなりの枚数が増えているようだ。