どん。

どん。

タンクの内側から蓋を持ち上げようとしている。

転がり落ちるように梯子を降りた正岡は、
地下室の出口に向かった。
四つん這いになりながら階段を上がる。
手足が言うことを効かない。
まるで他人の手足だ。

地下室から抜け出したが、1,2階の非常口の扉は施錠されている。
ようやく、先ほどまで隠れていたトイレに逃げ込んだ。
荒い呼吸を繰り返しているうち、どうにか気分が落ち着いてきた。

「慌てるな、落ち着け。引っ張った時にロープから
抜け出たんだ。だから浮いてきた、それだけの話だ」

腕にはハッキリと掴まれた感触が残っていたが、
正岡は無理矢理自分に言い聞かせた。
あの崩れ様では身元すら判るはずがない、放置しても良いだろう
と正岡は判断した。

トイレのドアを開け、外に出る。
その途端、激しい水が襲ってきた。

「な、なんだ」
両手で頭をかばいながら、必死で水の出所を探る。
水は散水栓から噴出していた。
ホースが生きている物のようにクネクネとのたうち回る。
鎌首のように持ち上げた筒先から、どす黒い水が
正岡を容赦なく打ち付ける。
正岡はトイレに逃げ戻った。
六へ