台所に入ると、テーブルの上に笹が置いてあった。
母からの手紙が添えられている。

『久しぶりに貴方のお誕生パーティーを開きましょ。
七夕飾りの用意だけお願いします。
ケーキ買って帰るからね』

現金な物で、途端に機嫌が良くなってきた。
幾つになっても、誕生日のパーティーは楽しみなものだ。
そうだ、おばあちゃんにも手伝ってもらおう。
知佳は自分の思いつきにワクワクしながら祖母の部屋に向かった。

祖母は陽だまりの中で、うつらうつらと居眠りしていた。

「おばあちゃん」
何度目かの呼びかけで、ようやく祖母は目を覚ました。

「はいはい、どなたですかな」
一日に二回の自己紹介は結構キツいが、知佳は何とか頑張った。
その甲斐は有ったと言えるだろう。
笹を見た祖母が、目を輝かせて喜んだのだ。

そう言えば、七夕の飾りつけをするなんて何年振りだろうか。
折り紙とハサミと糊。
切っては繋げ、星や輪を作る。

「こうすると提灯になるんだよ」
祖母も嬉しそうに作っている。
不思議な事に、子供の頃の記憶は無くしていないようだ。
ゆっくりとした動きで、次から次へと作り続けていた祖母が、
急にその動きを止めた。