ビリケンさんの呼びかけにも応えようとしない。しばらくして、そろりと言った。

「…金以外のもんでもエエのんか?」

「…かまへんけど、俺にできることなら」

「俺もビリケンさんになりたい」

沈黙と静寂。

「…なんやてか?」

「そやからな、ビリケンさんになりたいねん。
しばらくでエエねん。
通天閣の上から、ぼんやりと街の景色を眺めながら、みんなの幸せな顔を見ていたい」

ビリケンさんは呆れた様子である。
「何ちゅうオジンくさい願い事やろか。まぁ、もしかしたらそう言うかもなぁとは思とったんや。
エエやろ。しばらく替わってやろ。
ただし」

ビリケンさんは、厳しい顔つきで年春を指差した。
吊り目が細く細ぅくなり、年春を睨む。

「ただしやな、条件があるで。これからおまえの目の前で、何が起きても声を出したらアカン。
できるか?」

年春は間髪を入れず承諾した。
何が起きても声を出すな、と言うのは彼にとってはサービス問題である。
何しろ、石になって過ごしてきた人間なのだ。
その時に培った経験が役に立つ。

「そんなんでエエんか?まかしといてんか」

「よっしゃ、ほたら始めるで。俺がエエっちゅうまでやからな。」

ひのふのみっつ!

ビリケンさんが合図と共にパァンと手を打った。
五へ