肩を落とし背中を向ける慎太郎に、そっと成美が寄り添う。
その姿を痛ましげに見守る静香を美紀が手招いた。
いつの間にか、裏庭に回っている。

「何?なにしてるの美紀ちゃん。行くわよ」

「先生、早く早く、こっち」

「何よ全く…」
裏庭に回った美紀は、まるで張り込み中の刑事のように
物陰に隠れて部屋の中を覗きこんでいる。

「お行儀悪いわよ、美紀ちゃん」

「いいから見てください、先生。あの部屋の中」

「なんだって言うのよ」
こっそりと覗き込んだ静香は、思わず息を飲み込んだ。

部屋の壁一面に、慎太郎の写真が貼ってある。
七五三、入学式、運動会。
遠足、卒業式、公園で遊ぶ姿、海で泳ぐ姿。
眠った顔、泣いた顔、そして笑顔。
ありとあらゆる日常がそこにあった。
おそらく、久美子が送っていたのであろう。
その写真に話しかけながら、慎一は懸命に働いてきたに違いない。

「こんな優しいお父さん、滅多に居ないですよね。先生」

「そうね。さ、帰りましょ美紀ちゃん。慎太郎さんにこの事を
教えてあげなきゃ」