(弱ったわね。資料は全部始末したつもりだったんだけど)
さてどうするかなと悩むいぶに、思わぬ助け舟が出された。

黒服の背後から走ってきた給食当番の男の子が、派手に転んだのだ。

その拍子に舞い上がった鯖のノルウェー風が、黒服の頭から大量に降り注ぐ。
たちまち黒服はノルウェー風に味付けられてしまった。
もちろん、持っていた資料も見る影も無く汚されてしまう。

「ああっ!なんてことをこのクソガキっ!」

「みんな聞いた?この人、クソガキって言ったわよ」

きぃちゃんが一歩前に進み出た。
「いい加減にしないとノルウェー風だけじゃ済まないわよ。
竜田揚げにしちゃろかっ!」

「こら、きぃちゃん。
さ、どうぞお引き取りください」

怒りが最高潮に達すると、いぶは矢鱈と丁寧になる。
柔らかな物腰に秘められた恐ろしい実力を見て取ったのか、黒服達は押し黙ったまま立ち去り、二度と来ることは無かった。

「かぁ~っ、姉御、すっきりしやしたぜっ」

「姉御は止めてってば。君、怪我は無かった?今すぐ代わりの分を用意するからね」

給食をこぼして泣きべそをかいている少年に話しかけるいぶは、普段の優しいいぶに戻っている。