「どうしたの、おばあちゃん」

祖母は黙ったまま立ち上がり、押入れを開け、
小さな箱を取り出してきた。
知佳はその箱に見覚えがあった。
幼い頃、祖母の誕生日に贈ったものだ。
祖母は大切に箱を持ち上げると、底にあるネジを巻き始めた。

「思い出した。それ、オルゴール付きの宝箱だ。
曲目は確か…七夕さま」

流れてくるメロディーに合わせ、祖母が小さな声で歌い始めた。

ささの葉サラサラ のきばにゆれる
お星さまキラキラ 金銀砂子
五色のたんざく わたしが書いた
お星さまキラキラ 空から見てる

優しい優しい歌だ。
いつしか知佳も祖母に合わせ、七夕飾りを見ながら
歌っていた。
歌いながら、祖母がオルゴールの中から古びた短冊を
取り出し、笹に吊るした。
その短冊には、幼い文字が書かれてあった。

『おばあちゃん いつまでも ながいきしてね』

祖母が知佳の手をそっと握り、言った。
「さ、これでいいよ知佳ちゃん」

「おばあ…ちゃん、わたしが知佳って判るの」

「何言ってんだい、当たり前だろ。今日は知佳ちゃんの
誕生日じゃないか。
何を御馳走してあげようかねぇ、下坂屋の屋上で
ソフトでも食べるかい」