「わしが寿老人。こちらが福禄寿。我らは二人であり、一人である」

「さよう。並の相手なら、この姿見ることも適わぬよ。
仁衛門、己の力量を誇るが良い。もっとも、ここで死ななければ、だがな」

カラカラと笑う福禄寿。
いつの間にか、寿老人は仁衛門の背後に廻り込んでいる。
二人の手には杖が握られている。

「死ね」
同時に叫ぶ。
まるで鏡に写したかのように、全く同時に動く。
仁衛門が両刀を携えていなければ、たちどころに撲殺されて
いたに違いない。だが仁衛門は二人の攻撃の全てを凌いだ。

「ひゃぁ、やはり只者では無いのう…、われらが攻めを見事に
除けよったぞ。なぁ禄寿」

「さよう。だが我等にはまだ取っておきがある。のう、寿老」
二人の口が大きく開いた。
舌がだらり、と垂れる。
先端が見る間に尖っていく。
ぐぐ、っと蛇のように鎌首を上げ、仁衛門目掛けていきなり伸びた。
かろうじて剣で払う。
ぎん、と金属同士が当たる音がした。

次々に舌が襲ってくる。仁衛門の唐剣を上回る柔軟な、
それでいて鋭い舌が徐々に仁衛門の体を切り刻んでいく。


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