「うわぁ!犬が喋った!」
驚く風太に、茶色い犬が近づいて来ました。
まるで地上を歩くように、空中を進んで来ます。

「失敬な。わしゃ犬などではない。シーサーだ」
犬はムスッとした表情で言いました。

「シーサー?」

「さよう。沖縄から来て道に迷っておる。東京はどっちじゃな?」

よく見ると、犬は置物のようです。
茶色い体は漆喰か何かで出来ているようでした。長い旅を続けてきたらしく、所々ひび割れています。

「東京は…あっちだけど」
風太は東を指差した。

「でも…まだまだ遠くだよ?シーサーさん、一人で大丈夫?」

シーサーは何も答えようとしません。
どうやら、ずいぶん心細い様子です。

「良かったら僕、一緒に行こうか?この雲なら、すぐに着くよ」

シーサーはギロリと風太を睨みつけました。

「ついて来たかったら好きにしなされ」

そう言いながらもシーサーは嬉しそうにゴトゴトと動いています。
風太はクスッと笑いながら、東に向かって雲を向けました。

シーサーは落ちないように風太の懐に入っています。

「ほほぅ。なかなかに快適じゃの。ありがとうよ、風の民」

「風太です」

「風太か。うむ、良い名前じゃ」