開始と同時に物凄い蹴りが唸りをあげて右即頭部を狙ってきた。
啓吾は避けるだけで精一杯だった。
次々に襲ってくる攻撃は、かすっただけで重い衝撃があった。
格が違う、会場中の皆がそう思った。

だが、あきらめていない者がいた。
美濃浦。
赤井。
香織。
良太。
そして誰よりも、啓吾自身。

啓吾は相手の正拳突きに合わせて、ローキックを放った。
脛が痛もうが、足が折れようが、構わない。
もうこれしか無い。これにかけるしかない。
一つだけ、策がある。
美濃浦が冗談半分で見せてくれた技だ。
出来るかどうか判らない。出来るとしても、この体力では
一度だけだ。

その瞬間を啓吾は、痛みに耐えつつ待った。
相手に慢心が起こった。
これ以上、こいつは何もできない。
一つ覚えのローしかない。
そう、思ったに違いなかった。

そのわずかな一瞬、啓吾の右足はローキックではなく、
途中で軌道を変えて相手の右首筋に入った。

「やった!」
美濃浦と赤井が同時に叫ぶ。
見事な蹴りだった。相手は、前のめりに倒れた。