「兄者」

「なんだ、小吉」

「地味な任務だね」
文句を言いながらも小吉は手を休めようとしない。
一番年下だが、三兄弟の中では、一番の働き者だ。

大吉、中吉、小吉の黒猫三兄弟は、闇軍団という通り名を持っていた。
もっとも、彼等が勝手にそう名乗っているだけなのだ。

彼等は兄弟三人、力を合わせて助け合って生きてきた。

辛うじて、母の顔を覚えているのは長男の大吉だけだ。

三兄弟はまとめて捨てられていたが、近所に猫好きの人間が沢山いた為、野良猫とは言え、食べ物には事欠かなかった。
何度となく、彼等を育てようと話しかける人間も居たが、三人まとめてとなると大抵が二の足を踏む。

そんな時、長男の大吉は深く頭を下げて丁寧に断るのだった。

彼等の事情を知ってか知らずか、闇軍団に時々仕事を依頼する人間がいた。

そして今日の依頼がこれ。

『七夕の笹に青蛙のオモチャをぶら下げて廻る。』

どういう意味があるのかは判らない。
依頼主である男は、時々妙な事をしては喜んでいるのだ。

「よし、あとはあの保育園だけだ。」
次男の中吉が尻尾で指し示そうとして途中で止めた。
何やら飛び跳ねている大吉が居たのだ。

二へ