何だったんだろう…
一度そう思うと、たまらなくなった。

(あの駅に降りたら、何か違うことが起きるかもしれない…)
降りよう。次の駅で降りて、歩いて見に行こう。
これが最終電車だから、トンネルの中を歩いても大丈夫だろう。
決めた途端に、ワクワクする。
そんなことをする自分が馬鹿らしくも愛しかった。
次の駅が近づいてきた。
橋本は立ち上がった。
気のせいか、体までが軽くなった気がする。

駅員に見咎められると計画が台無しになる。
橋本は、電車が行くのを待ち、ホームから線路に降りた。
月明かりが線路を鈍く照らしている。
トンネルは遙か遠くに見えているが、彼の足取りは軽かった。
聞こえてくるのは、自分の足音と虫の音だけだ。
運動不足の体には辛いはずの砂利道が、何故か全く気にならない。
心臓の調子もすこぶる良い。ここ何年も無かったぐらいに気分が良かった。
その駅に辿り着いたとして、何をするつもりなのかは決めていない。
ただ、誰も居ない家には帰りたくなかった。
静かな暗いトンネルの中の駅で、ベンチに座って一晩過ごす。
今の橋本には、それは何よりも魅力であった。


四へ